スポーツデータコラム

マー君、ダルビッシュ..エースの穴はどうやって埋まってきたか?

 近年MLBへの人材流出が続くプロ野球界、とくに投手では田中将大(元楽天)やダルビッシュ有(元日本ハム)といった球界を代表する選手が必ずといっていいほどMLBへと移籍していく状況だ。今シーズンも前田健太(元広島)がドジャースへと移籍した。彼らはチームだけでなく日本球界でもトップクラスの選手なので、去られてしまったチームにとって戦力的な穴は極めて大きいものとなる。表1は近年MLBへ移籍した投手のうち、移籍前年に所属チーム内で最多の投球回数を記録していた投手の一覧である。いずれも移籍時点では日本有数の実力を備えていた投手たちであることには異論がないだろう。では彼らが移籍した後、チームはどうなってしまったのか?ここからはそれぞれのケースを振り返ることで「大エースの抜けた穴」について検証していきたい。
表1

過去最も大きい「穴」となったのは2013年オフにヤンキースに移籍した田中のケースだろう。2013年シーズンの田中は27試合に先発、チームはそのうちの26試合で勝利、先発試合の勝率は.963という空前のものだった。楽天はこの年日本一となったが最大の貢献者であったことは間違いない。この年田中が投げたイニング数は211。翌年この211イニングはどうなったか?前年位164回2/3を投げていた則本がイニング数をさらに伸ばして199回1/3を記録、エースとしての座は則本に引き継がれた。そして失われたイニング分を埋めることになったのが、2013年はケガのため全休していた塩見と、ルーキーの松井裕だ。この2人は合計で37試合に先発し、イニング数は214回2/3と量の面の穴埋めには大きく貢献、しかし先発試合の勝率.963という「質」の
面は埋められるものではなく、この2人の先発試合でのチームの勝率は.471に止まった。結果として2014年の楽天は前年から勝率が.138も下落、順位も最下位に転落してしまった。211イニングという「量」に加え、9割を超える勝率という高すぎる「質」を伴っていた田中の穴は近年最大といえるだろう。
表2
 次に大きい「穴」だったのが2006年オフにレッドソックスに移籍した松坂のケースだ(表3)。田中の勝率.963には及ばないものの2006年の松坂先発試合の西武の勝率は.760と今回の7つのケースの中では2番目に高いものだった。この穴をある程度埋めたのがそのオフに入団した岸だった。岸は前年に松坂が記録した186回1/3には及ばないものの156回1/3を投げて大部分をカバー、チームの勝率も.565と好成績だった。しかし勝率.760という「質」は1人の新人の活躍で埋まるものではなく、西武の勝率は.132も下落、順位も前年の2位から5位へと大きく後退してしまった。ただし岸はその後も2ケタ勝利7回と順調に成長、エースの座自体はスムーズに引き継がれた。
表3
 ここまでの2チームとは対照的に「穴を埋めきった」のが2012年の日本ハムだ。この年の日本ハムは前年に18勝6敗、防御率1.44と圧倒的な成績を残し、232イニングも投げていたダルビッシュがレンジャーズに移籍した。この232というイニング数は今回のケースの中では最多のもの。「量」の面では最大の穴だった(表4)。この穴埋めに最大の貢献を果たしたのがプロ入り6年目、前年は一軍で0勝だった吉川だ。この年の吉川は173回2/3の投球回数を記録し14勝を挙げる大活躍、先発試合の勝率は前年のダルビッシュを上回る.708というもので「質」という埋めがたい穴を埋めてみせた。そして「量」の面では多田野、八木という過去に実績ある中堅投手が復活、前年の先発回数は多田野が0、八木は3回というものだったが、この年は2人合計で30回の先発をこなして穴埋めに貢献した。この結果チームは前年を上回る勝率を記録し優勝、見事にエース流出のシーズンを乗り切ってみせた。
表4
 ただしこの日本ハムのケースでは前年にリーグ覇者のソフトバンクが同じようにエース流出のシーズンとなっていたことが、好成績につながったことも間違いないだろう。2012年のソフトバンクは日本ハムよりさらに大きな穴に直面していた。前年16勝でチームトップの184回2/3を投げた和田がオリオールズに移籍したことに加えて、先発試合の勝率では和田を上回り、最多勝も獲得したホールトンと、チーム4位となる171回1/3を記録した杉内が揃って巨人に移籍してしまったのである。チームの総投球回数の4割以上を投げていた3投手が流出するという総合的には近年最大の穴は埋まるものではなかった。前年34回2/3に止まっていた大隣が177回1/3を投げて左のエース格に成長し、さらに高卒ルーキーの武田や復活した新垣などが奮闘したものの、チームの勝率は.149も下がって順位も3位に後退してしまった。
表5
 エースの流出を中継ぎ投手の負担増で埋めることになったのが2007年の阪神だ(表6)。2006年に209回を投げていた井川の穴埋めとしてボーグルソン、ジャンという新外国人投手を獲得するも規定投球回には届かず、前年にローテーション投手だった福原、安藤まで大きく投球回数を減らしてしまい、このシーズンは1人も規定投球回数に届かないという異例の先発陣となって
しまった。この影響を受けたのが救援投手陣で、救援投手の投球回数は前年から170回近く増加、ルーキーの渡辺が58回1/3、前年1回1/3しか投げていない橋本が49回1/3とフル回転、さらに一番負担が増したのが久保田。久保田の投球回数は2006年の50回から倍増を超える108回に達し、登板数もプロ野球史上最多の90試合に膨れ上がった。この救援陣の奮闘もあって勝率は前年からマイナス.063にとどめたものの、エースの流出が先発陣全体の地盤沈下を招いた例だといえるだろう。
表6
 そしてエースの穴以上に穴埋めできてしまった稀有なケースが2008年の広島である(表7)。2007年オフにドジャースへと移籍した黒田の後釜として新外国人のルイスを獲得すると、前年の黒田とほぼ同等の投球回数と、黒田を上回る勝率を記録し穴が見事に埋まった。さらにこのシーズンには2年目の前田健がデビューし、108回2/3を記録、先発試合の勝率はルイスを超える.647だった。この後前田健が球界を代表するエースにまで成長したこともあって、これが最もスムーズに大エースの穴を埋めきったケースとなった。
表7
そして今シーズン、広島はその前田健太が再びドジャースに流出するという事態に直面している(表8)。当然その穴は大きなものだが、一つ興味深い事実もある。表1で示したように昨シーズン前田が登板した試合の広島の勝率は今回のケースの中では最低の.517しかなかった。エースが投げた試合でこれだけしか勝てなかったことは昨シーズンの低迷の大きな要因であったが、逆に言えば今回の穴が、少なくとも「質」の面では田中や松坂のケースのような大きなものになっていないということでもある。前田が先発していた29試合を5割の勝率で乗り切れば勝率の面での悪影響はほとんど出ないのだ。田中の27試合を勝率5割で乗り切っても勝ち数が半減していたことになる2014年の楽天のケースと比較すれば、その穴の差がお分かりいただけるだろう。さらに今シーズンの広島の場合は、前年に2番手投手としては今回の7ケース中最多となる194回1/3を記録したジョンソンの存在も大きい。200イニングを超えた投手が抜けてなお200イニング近いイニングを計算できる投手がいるという状況はかなり恵まれたものでもある。
果たして今シーズンの広島は前回の黒田流出時と同じように危機を乗り切ることができるのか?大いに注目したいところだ。
表8

広島かG大阪か データで見るゼロックス杯の展望

20日に行われるゼロックス スーパーカップをもって2016年シーズンのJリーグが開幕する。今回は同大会の展望についてまとめたい。

ゼロックス スーパーカップとは、前シーズンのJ1年間優勝チームと天皇杯王者が対戦する大会で、Jリーグ開幕の1週間前に行われる、その年度の最初の公式戦である(年間王者と天皇杯覇者が同一だった場合、2008年までは天皇杯準優勝チーム、現在はJ1年間準優勝チームが出場権を得る)。1994年に始まった大会で過去の結果は表1の通り。
表1 過去
通算成績はJリーグ王者の13勝、天皇杯覇者の9勝となっており、ここ最近は7年連続でJリーグ王者が勝利している。そして2016年は、広島(J) vs G大阪(天皇杯)という組み合わせとなっている。この両チームは過去にも同大会に出場した経験があり、それぞれ広島3勝0敗、G大阪2勝3敗という結果を残している。

そんな両チームの昨シーズン対戦成績は表2の通り。リーグ戦、チャンピオンシップ、天皇杯で戦い、2勝1分2敗と五分の成績。しかも、チャンピオンシップでは勝利した広島が年間王者に、天皇杯ではG大阪が広島を撃破した勢いそのままに天皇杯を制しており、「どちらが2015年最強チームか」という意味でも譲れない対戦となりそう。
表2-1 対戦
表2-2 対戦

真の2015年度王者を決める今回の対戦場所は、日産スタジアム。表3には、両チームの同スタジアムでの過去成績をまとめた。それによると、互いに14試合行っているが成績は決して芳しいものとは言えず、スタジアムに対する相性は互いに良くはないようだ。では、気象条件による影響はどうだろうか。20日は曇りのち雨の予報となっているが、表4の昨年度の同天候時の成績によると、両チームともに雨が降ると勝利の確率が低くなっている。どちらに有利とも言えない。
表3 スタジアム
表4 天気

環境面では五分といえる2チームの争いだが、試合状況別の成績ではどうだろうか。表5-1には先取点を取った時、前半をリードして終えた時の試合結果をまとめた。これによると、両条件で広島が高勝率をマークしているのだが、気になるデータも。
表5-1 状況

それは、昨シーズン広島の総得点(計73点)の大部分を占めたドウグラス(21点)が移籍によりチームにいないということ。ドウグラスが先取点を取った試合は8試合あり全勝(表5-2)。広島が誇る先取点を取った試合の高勝率を支えた立役者の移籍の影響がどう出るか。
表5-2 状況

さらに詳細なデータで見てみたい。時間帯別の得点数と失点数をまとめたものが表5-3で、得点数の「※」はドウグラスの挙げた得点を抜いたものとなっている。その集計によると、広島が多くの得点を挙げていた前半1~30分、後半46~60分の時間帯で影響が大きいことが見てとれる。しかも、その時間帯はG大阪の失点数が多い時間帯でもあるだけに、広島の得点力ダウンには予想以上の影響がありそうだ。
表5-3 状況

昨年の対戦成績や条件による勝率では五分の両チーム。失点数の少ないチーム同士の対戦だけに、勝負のカギはやはり得点力か。広島はドウグラスの穴をウタカ、宮吉ら補強陣が埋められるか、一方のG大阪は補強したアデミウソンがさらなる得点力アップに貢献できるか、シーズンを占う上でも楽しみな一戦となりそうだ。

打率3割、20本、10勝、20セーブ…達成が難しいのは?

キャンプインから2週間が経過したプロ野球、週末には早くもオープン戦が始まりいよいよ本格的に野球のシーズンが到来する。ファンにとってこの時期に最も気になるのは、期待の選手や贔屓の選手が今年はどのくらいの成績を残せるのか?ということ。そしてそういった話題で使われるのが「3割」や「10勝」といったいわゆる「キリの良い数字」だ。「打者は3割、投手は10勝で一流」といった言葉もあるように、3割や10勝、20本塁打のようなキリのいい数字はそこを超えることが「野球選手としての成功」を意味する面がある。そこで今回は野手の3割、20本塁打、20盗塁、投手の10勝、20セーブ、20ホールドポイントを達成することがどのくらい「難しい」ことなのかを調査した。

調査は2000年以降のドラフトで入団した選手を対象とし、どのくらいの選手がそれぞれの記録を達成しているのかを「達成率」として算出した。対象となった選手数は表1の通り。2000年以降のドラフトで入団した選手は育成選手も含めると投手が729人、野手が617人で、投手、野手ともこの人数が達成率の分母となっている。ではここからは達成率の高い、つまり達成がわりあい容易な記録から順に紹介していきたい。
表1

難易度:低 野手の3割、投手の20HP(ホールドポイント)

野手の3部門のなかでは打率3割、投手では20HPを達成した選手が最も多いという結果になった(表2)。達成率は3割が43人で7.0%、20HPが72人で9.9%となっている。HPは2005年に制定された新しい記録にも関わらず今回の6部門の中では最多の選手が達成している。これはセーブや勝利投手と違って1試合で複数の選手が記録することができるという点が大きいだろう。基準を30HPとすると達成者は14人、達成率は1.9%に激減するので25HP程度がほかの部門と同程度の難易度となるのかもしれない。
達成者数を入団したチーム別にみてみると3割打者を最も輩出しているのはヤクルトで6人、HPは中日と日本ハムの9人だった。ヤクルトは2000年指名の畠山を皮切りに、2002年の雄平、2003年の青木(現マリナーズ)、2004年の田中浩、2005年の川端、2010年の山田と定期的に主力野手となった野手が登場していて野手の輩出力という点では12球団屈指といえるだろう。HPでトップだった中日はなんといっても岩瀬の存在が大きい。この間10年以上にわたって不動のクローザーとして君臨していたため、クローザー級の実力を持った投手たちが次々とセットアッパーとして起用されHPを稼いできた結果が最多の9人という数字につながった。日本ハムは2001年からの9年間で指名した選手の中から8人も20HPの達成者が生まれた。毎年のように有能な中継ぎ投手を発掘するスカウト力には目を見張るものがある。逆に達成者が少なかったのが野手では中日とオリックス、投手は楽天、西武といったチーム。3割達成者が2人だけの中日とオリックスはともに他球団移籍後に3割を達成した鉄平(中日→楽天)と平野恵(オリックス→阪神)を含むため、自チームでの達成者は大島と後藤(現楽天)だけだ。
表2

難易度:中 野手の20盗塁、投手の10勝

3割や20HPより達成の難度が高いのは野手の20盗塁と投手の10勝。それぞれの達成者は20盗塁が39人(6.3%)、10勝が64人(8.8%)だった(表3)。最も一般的な「一流基準」ともいえる投手の10勝だが、それを達成できる選手は10人に1人以下、平均すると1チームあたり3年に1人が入団する程度の確率となっている。その中で最多の9人が10勝を達成しているのが中日だ。昨年も2012年に7位で指名した若松が早々と10勝を達成、ドラフト順7位の投手の10勝は2000年以降の本ドラフトで入団した投手の中では最も低い順位(2001年の近藤、2004年の東野は7巡目指名だが、この時期のドラフトでは指名権のない巡目が存在したため、球団内での指名順はともに6番目だった)でもある。ただ一方で中日は20盗塁の達成者がワーストの1人しかいない。20盗塁の達成も3割と同じ大島なので生え抜き野手の輩出という点では投手に比べて大きく見劣っている。10勝投手の誕生という点で遅れをとっているのがDeNAだ。今世紀指名した65人の投手のうち10勝を達成したのは井納ただ1人。長年の低迷の最も大きな原因となっていたことは間違いないだろう。
表3

難易度:高 野手の20本塁打、投手の20セーブ

今回設定した3部門の中で最も達成が難しいのは20本塁打と20セーブだ(表4)。パワーヒッターの証ともいえる20本塁打だが達成者は打率3割のほぼ半分となる22人だけ。達成率は3.6%なので30人に1人程度しか到達できないという計算になる。この高いハードルを越えた選手を最も輩出しているのが西武とヤクルトだ。打率3割でも好成績だったヤクルトはここでも4人が達成、そのすべてが3割とダブルでの達成者(畠山、青木、雄平、山田)だった。西武からは日本を代表するホームランバッターである中村のほかに、中島(現オリックス)、浅村、G・G佐藤といかにもスラッガーな選手が定期的に誕生していて、昨年17本塁打の森も順調であれば間もなくこの中に加わるだろう。強打者の輩出という面では12球団の中でも群を抜いている。
一方強打者が生まれないのが、楽天、広島、中日だ。楽天の場合はチームの結成が2005年なのでほかのチームより入団人数も少ないという事情もあるが、広島は今世紀すべてのドラフトに参加しながら20本塁打を達成した選手が誰もいないという惨状、中日も20本塁打を打ったのはソフトバンクに移籍後の田上なので、実質0人といってよい。セ・リーグでは阪神も20本塁打達成が鳥谷だけという状態で、リーグの半数のチームで「野球の花」であるホームランを打てる野手ほとんど生まれていないというのは、危機的状況ではないだろうか。
投手部門で最も難易度が高い20セーブ、これは「チームにはほぼ1人しかクローザーが存在しない」という事情が大きいだろう。5~6人の枠がある先発投手とは違って、クローザーは基本的に1チーム1枠だけ。チーム内のほかのすべての投手との競争に勝った投手のみが挑戦できるのが20セーブという風に考えると、この難易度にも頷けるのではないだろうか。ここでの最多輩出はオリックスと西武の4人だが、セーブ数はほかの部門と異なって達成者をたくさん輩出すればいいというものでもない。岩瀬や藤川といった絶対的なクローザーが長く存在したチームは達成の人数も少なくなるからだ。
表4
最後に選手個人として野手の3部門すべて達成した選手を紹介したい。それが表5である。昨シーズントリプルスリーを達成した柳田と山田は当然だが、そのほかには3人しかおらず達成者は計5人、達成率は0.8%なのでこのような成績を残せる選手は100人に1人以下ということになる。これを1年で達成してしまうトリプルスリーの難易度は相当なものだ。ちなみに現役では1999年以前に入団した松井稼(楽天)と井口(ロッテ)も3部門すべてを達成している。
一方投手として10勝、20セーブ、20HPを達成した者はいない。現役すべての選手を対象としても達成しているのは五十嵐(ソフトバンク)だけ。HPは2005年に制定された記録なので五十嵐はNPB史上唯一の達成者ということになる。2000年以降入団の選手で可能性がありそうなのは、20HPだけ未達成の岸田(オリックス)、寺原(ソフトバンク)や20セーブが未達成の浅尾(中日)といったところだろうか。とくに岸田は昨シーズンのHPが19と達成まであと一歩だった。もし達成していたならばその達成率は0.13%というものすごい数字となっているところだった。果たして今シーズンに達成することができるだろうか。
表5

Jリーガーには移籍がつきもの?

2月に入り、Jリーグから各チームの今季登録選手リストが発表された。そこには各選手の生年月日や身長体重、出身地などが記載されているのだが、今回はその中から「前所属チーム」の部分に焦点を当ててみたいと思う。

ここでいう「前所属チーム」とは、過去に所属したチームのことで、新人選手であれば所属していた「高校」「大学」、移籍選手であればそれまでに所属していた「チーム」が記載してある。それを「移籍経験選手」「生え抜き」「レンタルバック」「新人」と4つのカテゴリーに分け、球団別にどのような経歴を持った選手が多いのかをみていきたい。

各カテゴリーの説明は以下の通り。
・移籍経験選手:完全移籍を経験したことのある選手
・生え抜き:入団から現在まで同じチームに所属している選手
・レンタルバック:所属元が変わったことがなく、レンタル移籍のみ経験した選手(将来を見据えた育成目的の移籍)
・新人:高卒、大学卒、社会人などから新人で2016年に新入団した選手

■半数以上が完全移籍を経験

表1には、カテゴリーごとにJ1とJ2の違いをまとめた。リーグ全体でみた場合、58.4%もの選手が完全移籍を経験しているが、これについては、同じチームで現役生活を終えることの難しさよりも、サッカー独特の選手契約の存在が影響を与えているように思われる。サッカーはプロ野球とは違って選手生命が短く、短い契約期間が満了となった末に移籍先を求める状況や、好条件のオファーが舞い込み移籍する、というようなことが珍しくないだけに、このデータも納得がいく。
表1
また、リーグ間における相違点では、移籍経験有の選手がJ2に多い一方で、生え抜きやレンタルバックの選手はJ1に多くなっている。現在のリーグ間移籍の流れとして、J1経験豊富な選手がJ2へ完全移籍することや、育成目的で若手をJ1からJ2へ武者修行に出すことが多い点を考慮すると、移籍の構図を表したデータと言える。

■成績上位陣にみる真逆のチーム構成

続いてJ1。各チームのデータをまとめた表2-1、2-2をご覧いただきたい。
表2-1
表2-2

毎年のように広島から選手を補強していた浦和が完全移籍経験者の最も多いチームとなっており、その割合は77.8%。それに伴い、生え抜き選手数もリーグワーストとなっている。山田(湘南)矢島(岡山)阪野(愛媛)ら有望若手を数多くレンタル移籍させているものの、チームの主力となっているのは他チームから獲得した選手。彼らの牙城を崩せていない現状が数字として出ている。

その浦和と対照的なのが鹿島で、生え抜きが最も多い一方で、移籍経験者はリーグワースト。自前選手の率も54.9%(新人除く)と唯一半数を超えている。他にも柏や新潟、FC東京、G大阪、広島あたりが自前の選手を多く抱えているが、昨シーズンの順位を考えると浦和以外の上位陣は全て自前の選手が多いチームとなっている。育成こそがチームを強くする最善の方法であるのかもしれない。

■J1経験チームとそうでないチームの差

表3-1、3-2にはJ2のデータをまとめた。移籍経験者50%以下のチームがJ1で8チームあったのに対し、J2では50%以下は3チームだけ。さらに自前選手の割合も30%を切っているチームがJ1では1チームだったのに対し、15チームと、移籍で獲得した選手に頼らざるを得なくなっている。
表3-1
表3-2

特に、J1在籍経験のあるチーム(清水、C大阪、札幌、京都など)と、そうでないチーム間に差があるように感じられる。在籍していたチームは自前の選手比率がJ1に近い比率が確保できており、これがJ1を知るチームとそうでないチームの経験や資金力の差なのかもしれない。

ニューイヤーカップの順位次第で降格も?

2015年から始まった「スカパー! ニューイヤーカップ」が2016年も1月24日から開催される。参加チームは前回の7チームから12チームへ、そして開催地も宮崎、鹿児島に加えて新たに沖縄ラウンドが追加されるなど、昨年よりグレードアップしたニューイヤーカップ。今回は2016年大会の見どころや各チームの戦力を紹介するとともに、プレシーズンマッチだからといって侮ってはいけない気になる同大会のデータをご紹介したい。

まずは今大会の見どころから。表1には沖縄、宮崎、鹿児島で行われる各ラウンドの参加チームをまとめた。昨年参加した浦和、大分が参加を取りやめる一方で、FC東京、札幌、千葉など7チームが初参加となっている(表1赤文字)。
表1 16年 参加(1)

■沖縄ラウンド

今回から新設された沖縄ラウンドには、J1からJ3まで各カテゴリーのチームがエントリーする形となった。過去最高タイの年間4位で2015年シーズンを終えたFC東京の実力が抜けており、J2札幌、東京Vは最後までプレーオフ進出を争ったライバル、今季の戦いを考えればプレシーズンマッチとはいえ負けられない。琉球は監督選手が大幅に入れ替わる中、格上相手に今の実力をどれだけ試せるか注目だ。

FC東京:城福氏が6年ぶりに同チーム監督に復帰。太田、権田が移籍したものの、湘南から正GK秋元や元代表の駒野(磐田)、城福氏の教え子である阿部(甲府)や水沼(鳥栖)を獲得するなど、各ポジションで厚い選手層を誇る。

札幌:2シーズン目を迎える四方田体制。経験豊富な増川(神戸)、オランダのPSVにも所属経験のあるヘイス、マセードらを補強。昨年のベースをもとに戦力の上積みで2012年以来のJ1昇格を目指す。

東京V:若いチームに安定感を与えるべく清水の高木純、タイからは鹿島などで活躍した船山ら経験豊富なベテラン選手を補強、さらに昨季プレーオフ進出を逃した原因でもある得点力不足を補うべくブラジル人FWドウグラスも獲得した。

琉球:金鍾成監督のもと新たなスタートを切る2016年シーズン。昨季終了後に19名もの選手が退団。現在10名の新加入が発表されているが、うち7名が新卒選手とシーズンを戦う上では厳しい選手層。年々勝点を増やしているJ3生活も3年目を迎えるが、今季も厳しい戦いが予想される。

■宮崎ラウンド

このラウンド2年連続参加の鹿島、福岡に、鹿児島ラウンドから熊本、新たに千葉らJ2勢が加わった。ナビスコ杯を制した鹿島に対し、鉄壁の守備で今季J1昇格を果たした福岡の力がどこまで通用するのか。また大幅に選手が入れ替わり、昨年とは別のチームの印象が強い千葉、監督・コーチともに新体制で臨む熊本はチームの仕上がり具合が気になるところ。

鹿島:チーム得点王の金崎とは期限付き移籍の延長がかなわず、ダヴィとも契約満了。梅鉢、豊川ら若手有望株をレンタル移籍させるなど、得点力に不安が残る。補強もブエノ、三竿、永木ら中盤より後ろの選手が多く、少ないチャンスで如何に効率よく得点を挙げるかが今年の課題か。

福岡:昇格に貢献した選手の引き留めに成功。昨年のベースをもとにした守備陣に新戦力がうまく融合できるか。そしてその守備がJ1でどれだけ通用するか、得点力の強化が残留へのカギとなりそう。またオリンピック世代の金森、亀川、為田ら若手の成長も楽しみ。

千葉:24名が退団し、20名が新加入という異例な状態で、まさに一からのチーム作りとなる。昨年のレギュラーもほぼ抜けており、どんなチームになるのか関塚監督の手腕の見せどころでもある。近藤(柏)、阿部(甲府)、船山(川崎F)らを筆頭に新加入の選手は実績十分なだけに、戦術がはまれば一気の昇格もありえる。

熊本:小野前監督からヘッドコーチだった清川新監督へバトンタッチされ、コーチ陣も一新。さらに選手陣でもレギュラーだった養父や齋藤らが抜けるなど主力放出に陥ったものの、植田(岡山)佐藤(鹿島)村上(愛媛)ら経験豊かな選手を補強、さらに清武(鳥栖)のレンタル延長にも成功した。プレーオフ進出を目指して昨年以上の成績を目指す。

■鹿児島ラウンド

昨年に続き磐田、清水が参加。北九州と鹿児島Uが新規参加となった。このラウンドは今季新たな戦いに臨むチームが集まったといえる。J1参戦の磐田、J2降格となった清水、新スタジアムが2017年から使用開始となり、J1ライセンス獲得が可能となる北九州、J3参加の鹿児島Uなど、今年はやらなければならないチームばかり。各チームの意気込みが感じられるラウンドとなりそう。

磐田:駒野が移籍したものの、ジェイ、アダイウトンが残留し、中村(千葉)大井(新潟)を獲得、さらに新潟にレンタル移籍していた山本が復帰するなど3年ぶりのJ1復帰へ戦力は整った。得点力はあるだけに、守備力強化が残留へのカギとなりそう。

清水:チーム初のJ2での戦いとなる今シーズンに向け、昨年の主力慰留に成功。監督も昇格経験のある小林新監督を迎えるなど、J2仕様へシフトチェンジしつつある。とはいえ、J1とJ2は戦い方が全く別なだけに選手たちがそのギャップにいかに早く対応できるかが昇格への課題か。

北九州:念願のJ1仕様のスタジアムが2017年に完成する北九州。ライセンスが交付されれば、成績次第ではJ2卒業も可能なだけに選手、監督、チームの士気は上がっているはず。本山(鹿島)、池元(松本)、刀根(名古屋)ら地元出身の実力派選手も多く獲得し、昨年7位だった実力にプラスアルファができればプレーオフ進出は現実味を帯びてくる。

鹿児島U:初のJ3参戦。浅野体制2年目を迎える今年は、他チームと違い新卒の選手やJFLからの補強が目立つ。昨年のベースをもとにJ3での戦いにまず慣れることが今年の目標となりそうだが、1年でJ2へステップアップした山口のように何が起こるか分からないJ3だけに鹿児島旋風を巻き起こしてほしい。

■侮れないニューイヤーカップ

プレシーズンマッチであるニューイヤーカップだが、実は侮れないデータもある。表2、3をご覧いただきたい。こちらは昨年の同大会の各ラウンドでの成績表をまとめたものとなっている。中でも気になるのが、両ラウンドの最下位チーム。
表2 差し替え
表3 15年 成績(1)

宮崎ラウンドの大分、鹿児島ラウンドの清水は両チームともにリーグ戦で下部リーグへの降格が決まったチームである。ともに得点はある程度取れているものの、それを上回る失点数で勝点を奪えていない。これはシーズンに入っても同じで、最後までその体質が改善されずに降格を味わっている。

まだ1年間しか開催されていない大会ではあるが、シーズンを迎えるにあたって不吉なデータでがでているのも事実。2016シーズンはこのデータを覆す結果となるのか、その点も注目しながらニューイヤーカップ、シーズンを楽しんでみてはいかがでしょうか。