日本一わずかに1回、阪神は日本シリーズに勝てる?

プロ野球の日本シリーズが10月25日から開幕する。セ・リーグからは敵地東京ドームで宿敵巨人を4タテした阪神、パ・リーグは日本ハムとの死闘を制したペナントレースの覇者ソフトバンクが出場する。2003年以来11年ぶりの顔合わせとなったこのカード、前回はお互いに本拠地での試合に勝利するという「内弁慶シリーズ」となりダイエー(当時)ホークスが優勝した。長いシーズンの最後を締めくくるシリーズを制するのはどちらか、3つの視点から占ってみたい。

■先発投手 4本柱が盤石な阪神、ソフトバンクは攝津の起用がカギ

最初に短期決戦で最も重要となる先発投手陣について比較した。阪神は先発4人がいずれも好調(表1)。クライマックスシリーズに広島とのファーストステージで先発したメッセンジャー、能見はいずれも無失点、続く巨人とのファイナルステージでも初戦の藤浪、2戦目の岩田が7回を投げ切ると、ともに2度目の先発となった3戦目のメッセンジャー、4戦目の能見も5回2失点としっかり試合を作った。2ステージ6試合を4人の先発で乗り切るという理想的な展開でここまでを戦っている。シーズン中もほぼローテーションを守り切ったこの4人の安定感は抜群、日本シリーズでもこの4人で先発をまかなうローテーションで臨みたい。そのためにキーとなるのがメッセンジャーの先発日だ。中4日の先発もこなすだけに第1戦、5戦に先発するのがベストだが、1つ気になるデータがある。それが表2だ。これはメッセンジャーの甲子園での登板と、それ以外の球場での成績を比較したものである。防御率をみれば一目瞭然なように甲子園での防御率2.39に対してほかの球場では3.64とその差は大きい。この事実を重視しメッセンジャーで確実に2勝することを考えるのであれば先発は第2戦、6戦となる。ただそうなると初戦の先発投手を誰にするのかという問題が発生する。中4日で5戦に投げられる投手ということになれば藤浪が有力だが、果たして阪神首脳陣はどう決断するか。
一方のソフトバンクだが先発の充実度では阪神に見劣りする(表1)。ファイルステージでは大隣が中4日で2試合に登板しチームを救ったが、黄色靭帯骨化症という難病から復帰して間もないだけにどこまで無理がきくのかは不透明。また3戦目で先発し2回7失点と炎上した攝津をどうするのかも大きな課題となる。一時的な不調であれば当然日本シリーズでも登板するところだが、攝津の場合8月に親指の負傷から復帰後まったく結果が出ていないという現実がある(表3)。投球回数を上回る安打を浴び、奪三振とほぼ同数の四球を与えるなど内容もよくない。仮に攝津を外すとなれば代役は飯田ということになるが、その場合9月20日以来の公式戦となる。まだ経験の少ない投手だけに過度な期待はかけづらい。このように不安が多い投手陣の中で期待をしたいのがスタンリッジだ。昨シーズンまで阪神に在籍した右腕は6月9日の阪神戦(甲子園)で3安打完封勝利を挙げている。19日の第5戦でも6回無失点と調子も上々だ。契約延長を見送った古巣を見返す活躍ができればチームを大きく日本一に近づけることになる。

表1

表1

表2

表2

表3

表3

■リリーフ投手 呉昇桓はどこまで持つのか、手駒は豊富なソフトバンク

ここまでの快進撃はすべて呉昇桓の存在によるといっても過言ではない阪神。ここまでのクライマックスシリーズ6試合にすべてに登板、レギュラーシーズン終盤からは11試合連続で登板し、その間チームは1敗しかしていない。まさに獅子奮迅の活躍なのだが、その存在が圧倒的になるにつれ呉昇桓以外の投手を登板させにくい状態になっている側面がある。表4は両チームリリーフ陣のクライマックスシリーズでの投球数をまとめたものだが、6試合に登板した呉昇桓の投球数は実に126。阪神リリーフ陣の全投球数に対する割合は48%という非常に高い数字になってしまっている。4日連続の登板となった18日の巨人戦ではストレートにいつものスピードがなく2本のホームランを浴びた。点差もあっただけに力をセーブしたことも考えられるが疲れがたまっていることは間違いないだろう。とはいえここまでくれば出し惜しみすることはもうできない。呉昇桓が最後までその力を発揮できるのか、これが阪神日本一のための最大のポイントだ。

表4

表4

ソフトバンクのリリーフに呉昇桓ほどの圧倒的な存在はいない。五十嵐は第5戦で中田に同点弾を浴び、その試合ではサファテも2イニング目に力尽きた。しかしそれでも手駒は阪神を上回っている。2013年の日本シリーズで大活躍した森福、経験豊富な岡島、ロングリリーフも可能な岩崎などバリエーションが豊富な点が強みだ。レギュラーシーズン終盤は森、五十嵐、サファテと型にはめた継投で勝ってきたが、その3人が好調とはいいがたい状態だけに手駒を生かした臨機応変な継投が勝利へのカギとなる。

■野手 阪神・西岡、ソフトバンク・細川&鶴岡、日本一経験者に注目

2005年以来の日本シリーズ出場となる阪神、2011年以来のソフトバンク、野手の経験値ではソフトバンクに分がある(表5)。2011年の日本一時に主力だったのは内川、松田、長谷川、そして細川だ。細川は西武時代の2004、2008年にも日本シリーズに出場し、いずれも日本一となっている。さらに今シーズン日本ハムから獲得した鶴岡も2006、2007、2009、2012年と4度出場、2007年には日本一になっている。2004年以降10度の日本シリーズで7度も出場している2人の経験は何物にも代えがたい。この点はシリーズ経験者の少ない阪神に対しての大きなアドバンテージとなる。

表5

表5

一方の阪神は選手の入れ替えが進んだこともあり2005年の経験者は少なく、レギュラーだったのは鳥谷ただ1人。そんな中で頼りにしたいのが他チームでの日本シリーズ経験者だ。その筆頭がロッテを2度の日本一に導いた西岡。2005年は阪神の対戦相手として出場し圧勝、2010年は今回の阪神と同様にファイナルステージでアドバンテージを跳ね返して日本シリーズにたどり着き、日本一となった。クライマックスシリーズで西岡が復帰したあとチームは勢いに乗った。その存在感で自身3度目のシリーズ制覇を目指す。そしてもう1人の重要人物が鶴岡だ。実は彼も日本シリーズの経験者。巨人時代の2008年のシリーズでケガのためマスクをかぶれなかった阿部に代わって全7試合でスタメン出場している。結果として西武に敗れたものの、その経験は非常に貴重だ。DeNAに移籍した久保の人的補償として阪神が獲得した当時は疑問の声も少なくなかったが、ファイナルステージでは好リードで巨人打線も封じこめた。その評価はうなぎ上りで、もはや欠かせない選手となっている。シリーズでも正捕手として強力打線を抑え込めるか。

勢いに乗る阪神が優位だが

ここまで3つのポイントでシリーズの行方を考察してきたが、10月以降の勢い、先発投手の充実といった点からみても阪神が若干優位な状況は間違いない。しかし勢いに乗るチームは一度負けた時が問題。とくに今の阪神は呉昇桓という絶対的存在を全面的に生かしたチームとなっているだけに、その柱が崩れた場合の立て直しは容易ではない。ソフトバンクとしては呉昇桓攻略が勝利への近道、仮に初戦からそのミッションをクリアするようなことがあれば一気に形勢は逆転するだろう。このシリーズ最大の見どころは呉昇桓の最初の登板の結果といっても過言ではない。