ホームランが倍増、新統一球は「飛ぶボール」?

いよいよスタートした2014年のプロ野球、巨人が開幕5試合で77安打というプロ野球記録を樹立、その巨人に開幕戦で敗れた阪神はエースの能見が開幕投手としての最多失点記録(10失点)を喫するなど開幕4戦中3戦で2ケタ失点。そのほかにも開幕から一週間で昨年の倍にあたる11投手が5失点以上を記録したり、2ケタ得点を挙げたチームが6チームも生まれるなどロースコアが当たり前だった旧統一球の時代はもちろん、昨シーズンと比べても様相の一変した試合が繰り広げられている。いったい何が起きているのか、検証を行った。

<表1>

<表1>

まずは、表1をご覧いただきたい。これは開幕から2カードが終了した時点の打撃内容を昨年と今年とで比較したものである。目立つのは本塁打の増加で、28本から53本とほぼ倍増している。安打、打率、得点の増加はほぼこれに伴うものといっていいだろう。スタンドインする打球が増えた分、安打も得点も増える。簡単な理屈である。ところがその一方で投手の実力が最も反映するといわれる三振、四球の数にほとんど変化はない。本塁打増加は投手の実力低下ではなくほかの原因がありそうだ。

ここで考えられるのが昨シーズン中に明らかになった統一球の仕様変更だ。一大騒動となったこの問題、仕様の変更は昨シーズンの開幕戦から行われていたのであるが、その事実は選手に公表されず、また調整期間であるオープン戦では旧統一球が使用されていた。事実が明るみにでたのは6月11日、飛ばないボールに適応しようとしていたバッターにとってはまさに青天の霹靂であり、すぐに対応ができた選手は少なかったと考えられる。 そして迎えた今シーズン、各打者がオフの間からボールの変更に対する対応を進めたことは想像に難くない。「もう飛ばないボールではない」という意識が広まり、バッティングスタイルを変えた打者が増えた結果が開幕からの本塁打増加につながっているのではないだろうか。

では新統一球は「飛ぶボール」なのか。仕様の変更とともにバレンティンの本塁打記録が生まれたこともあり、根強くささやかれるこの問題について考えてみたい。

<表2>

<表2>

表2は2004年以降の本塁打数の推移を表したものである。2004年はここ10年で最多の本塁打が記録された。東京ドームでは1試合あたり3.43本の本塁打が記録され、3割打者が36人生まれるなど記録的な「打高投低」シーズンだった。近年言われる「飛ぶボール」疑惑が生まれたシーズンともいえ、翌2005年からはミズノ社の低反発球が導入されたことで極端な打高傾向は終息に向かった。その後加藤前コミッショナーの発案で統一球が導入される。1年目の2011年は開幕直後こそ前年と変わらない本塁打ペースだったものの、結果的には前年から4割減と記録的な本塁打減少が記録された。旧統一球で行われた2011、2012シーズンがいかに特異なものであるかは一目でお分かりいただけると思う。

そして2013年、統一球の仕様は変更され本塁打の数は回復。その傾向は今シーズンに入り加速し、昨年を大きく上回るペースで本塁打が記録されている。しかし、ここまでのペースである1試合あたり1.65本という本塁打発生率(年間換算で約1400本)は、毎年安定した本塁打数で推移していた2006-10年と比較して若干すくない程度、飛ぶボール全盛だった2004年とは比べ物にならない数値であり、「飛ぶボール」とは言えない水準である。

球団ごとに使用球が異なることで生まれた「飛ぶボール」問題。その解消のために行われた統一球の導入は3年間の紆余曲折を経て、ようやく当初の理想とされた状態に落ち着きつつあるといえるだろう。