原因はボールではない、ロースコアゲーム激増の要因とは

今年の野球は点が入りにくい、ホームランが減ったといったファンの声や記事が話題に上がることが増えている。確かに今シーズンは1-0で決着した試合がすでに9試合もあるなど、3-2、2-1といったロースコアの接戦が目立っている。とくにセ・リーグではその傾向が顕著で、ここまでのリーグ戦59試合中なんと29試合とほぼ半数の試合が両チームともに3点以下で終了した(表1-1)。このことで「ストライクゾーンが広がったのでは?」「ボールの仕様がまた変わったのでは?」といった声も散見される状況だ。はたして貧打の原因は何なのだろうか?

得点、本塁打が減っているのはセ・リーグ

その原因を探る前に前提となる事実がある。それは「得点や本塁打が大きく減っているのは実はセ・リーグだけ」ということだ。ロースコアの試合の増加はセ・リーグで際立っている(表1-1、1-2)。そして表2をご覧いただきたい。これはセ・パ両リーグの得点数と本塁打数を、今シーズンと昨年同時期とで比較したものだ。セ・リーグは得点が約33%、本塁打が50%以上減少しているのに対して、パ・リーグは得点が約10%、本塁打が約20%の減少に留まっている。ロースコアの試合(両チームの得点が3点以下)の割合もセ・リーグの49.2%に対してパ・リーグは29.1%、セ・リーグで「飛ばない統一球」時代の2011-2012シーズン以上にロースコア試合が生まれているのに比べ、パ・リーグは例年とさほど変わらない数字になっている。点が入らなくなっているのは主にセ・リーグに起きている変化なのである。

表1

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表2

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なぜセ・リーグの得点は減った?

ではセ・リーグに何が起きているのか?その原因を探るためまずはチーム別の得点と本塁打数を昨年と比較した。その結果が表3である。得点については各チーム減少しているが、とくに大きく減らしているのは、ヤクルト、阪神、広島。本塁打はヤクルト、巨人、広島の減少が目立つ。一方、DeNAは得点、本塁打ともに微減にとどめている。この差は何か?その答えが表4となる。これは外国人選手による本塁打数と打点数を昨年と比較したもの。DeNAの本塁打数と打点、中日の打点数以外は数字がすべて激減しているのがお分かりいただけるだろう。振り返れば昨シーズンは開幕から各チームの外国人選手が大活躍していた。ヤクルトのバレンティンは4月20日時点ですでに11本塁打、広島のエルドレッドは4割近い打率を残しチームの躍進を支え、阪神のマートンとゴメスは2人で54打点と強力打線の中心として君臨し、巨人のロペスとアンダーソンも主力として活躍していた。そして今シーズン、彼らのほとんどがケガによる離脱や移籍で不在なのである。そして彼らの代わりに出場している選手たちは、その穴を埋めきれていない。ヤクルトではユウイチ、田中浩、荒木、巨人では井端、金城、広島は新井、グスマン、野間らが外国人選手の不在によって出場機会を増やしている。それぞれ持ち味を生かした活躍は見せているものの、空いた穴はあまりに大きい。唯一残った阪神のマートンとゴメスも開幕から打撃の調子が上がらず、昨年の活躍とは比べ物にならない成績だ。このことが各チームの得点力低下、その結果としてのロースコアゲームの増加の要因になっていることは間違いない。巨人から移籍し、昨年以上の打撃成績を残しているロペスがいるDeNA、ルナに加え、エルナンデス、ナニータが活躍している中日が、それなりに得点力を維持していることがその証拠だといえる。

表3

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表4

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和製スラッガーが少ないセ・リーグ

セ・リーグの得点が減っている原因に外国人選手の大きすぎる穴があることが分かった。そうであれば彼らが無事に復帰したり、新たな外国人選手が活躍したりすればある程度各チームの得点力は上がってくるだろう。しかし、それだけでいいのだろうか?今回の現象は外国人選手がいなければ、ボールやストライクゾーンの影響が取りざたされるほどゲームの印象が変わってしまうことを、図らずも明らかにしてしまった。近年のセ・リーグでは打線の中核を外国人選手に任せるチームが主流だ。その結果、セ・リーグではこの10年の本塁打王、打点王のうち、日本人選手はともに3人。現役の両タイトル獲得経験者は、阿部、村田(巨人)と新井(広島)しかいない。これはパ・リーグの日本人本塁打王、打点王が10年で9人に上ることに比べて明らかにさびしい数字だ。打線の中核を担える存在があまり育っていないからこそ、その中核に穴が開いたときそれを埋めることが極度に困難になってしまっている。今回話題となったロースコアゲームの増加、その原因は近年セ・リーグのほとんどのチームが長打力とポイントゲッターを外国人選手に依存しきり、日本人のスラッガーが育っていなかったこと。そしてそこに外国人選手の一斉離脱が発生したことだといえるだろう。