【プロ野球】眼のいい打者は誰だ?選球眼を考える

一般に「選球眼」と呼ばれている能力がある。単純にストライクとボールを正しく判断する力とすることもあれば、打つべきボール、見送るべきボールを判断する力とすることもある。いずれにしても「選球眼」のよいと言われる打者は、近年重要性が広く認識されだした出塁率の高い打者であることが多い。今回はこの「選球眼」を、「ボールカウントを有利にコントロールし、うまくいけばヒットやホームラン、うまくいかなくてもフォアボールで出塁する力」としてとらえ、各打者の打席ごとのボールカウントの傾向から、優秀な「選球眼」を持つ打者を探していきたい。

選球眼を考えるにあたって、まずはボールカウント別の打撃結果の傾向をみていきたい。表1は昨シーズンの全打席での結果をカウント別にまとめたものである。カウントによって明らかに打者有利、投手有利の傾向がでているのがお分かりいただけるだろう。打者が有利なカウントはボール先行(1-0、2-0、2-1、3-0、3-1)のカウント、投手が有利なのは2ストライク後(0-2、1-2、2-2)である。ボール先行時の打者の打率はおおむね3割5分を超えている一方、2ストライク後では2割にも満たない。ボール先行のカウントを作れば出塁の可能性は飛躍的に高まるのである。
もう一つ特徴的なのはホームランの比率。昨シーズンNPBの試合での総ホームラン数は1361本、そのうちの約20%にあたる260本は初球をとらえたものであり、2球目までだと558本とその割合は約40%まで上昇する。全打席に対する2球目までのカウントの打席の割合は約28%なので初球、2球目を打った場合のホームランの出やすさは明らかである。狙ったボールであれば早めの勝負をしていく姿勢も「よい選球眼」のためには必要だといえる。
そして2ストライク後で唯一打率が2割を超えるのが3-2のカウント。このカウントでは打者の打率が.224まで回復するうえ、フォアボールを加えると約46%の打席で打者が出塁に成功している。2ストライクをとられた後でも3-2まで持ち込めばアウトになる確率は格段に低下するのだ。2-2での打率は.198しかないので、2-2からボールを選ぶと出塁の可能性は2倍以上になる。3-2に持ち込む力は打者の成績向上に大きな要素といえるだろう。

この傾向からみえてくる理想の打者像は次のようなものだ。
・初球、2球目は狙ったボールだけを思い切りよくとらえにいく
・2球目までに仕留められなかった場合はボール球を見極め、ボールを先行させる
・2ストライクを取られてしまったら何とか3-2に持ち込んでいく
この条件に一致する打者はいるのか?ここからはカウント別の打席割合(表2)で特徴的な数字を残している打者を紹介していきたい。

表1

表1

表2

表2

■マートン(阪神) 昨年の成績:打率.338 14本塁打 46四球64三振 出塁率.394

初球の割合は50打席以上の選手で最も多い24%、これはプロ野球平均(12%)の2倍という際立った数値になっている。2球目までを含めると41%と勝負の早さが目立つが結果も良好。2球目(0-0、1-0、0-1)までを打った時の成績は打率.426でホームランは9本と圧倒的だ。さらにマートンの本当のすごさはフルカウントの打席数だ。これだけ早めの勝負で結果を残しながら、フルカウントの打席割合もプロ野球平均とほぼ同じ12%。早めのカウントで狙いが外れた場合はフルカウントまで持ち込む、という粘りを持ち合わせており理想的な打者の1人だ。

■吉村(ソフトバンク) 昨年の成績:打率.296 5本塁打 24四球28三振 出塁率.384

初球とフルカウントの割合がともに平均を大きく上回るという特異な傾向を持つ打者。フルカウントの打席割合20%は昨年100打席以上の打者の中で9位と優秀で、フルカウントでの出塁率は.538と結果も出ている。しかしもう一つの特徴である初球打ちでの打率は.276、ホームランはなしと物足りない。念願のレギュラー奪取のためには初球打ちでよりよい結果を出すことが必要だろう。

■谷繁(中日) 昨年の成績:打率.195 1本塁打 39四球36三振 出塁率.316

監督兼任となった昨シーズンは打率が2割にも届かず、ホームランも1本とさびしい数字が並んでしまった。しかし打席でのアプローチではまだまだ優秀な傾向を残している。3ボールでの打席割合は29%とNPB平均の19%を大きく上回っており、この結果として三振の数36を上回る、39個のフォアボールを選んだ。セ・リーグで三振よりフォアボールが多かったのは200打席以上の打者では谷繁を含めて5人だけ。出塁率の.319もキャッチャーとしては合格点だ。

■鳥谷(阪神) 昨年の成績:打率.313 8本塁打 87四球80三振 出塁率.406

こちらも毎年多くのフォアボールを獲得するタイプの打者だが、昨シーズンは例年より若干早めの勝負している傾向が見られた。2013年には深いカウント(3-1、3-2、2-2)での打席割合が42%に達していたが、昨シーズンは37%に下がった。この変化がよい結果につながり3年ぶりに打率は3割超。阪神はほかにもゴメス(3-2の割合が21%)上本(同19%)福留(16%)と深いカウントでの打撃を好む打者が多い。投手としては非常にやりにくい打線だ。

■丸(広島) 昨年の成績:打率.310 19本塁打 100四球95三振 出塁率.419

最も投手有利なカウントでの打席が少ない打者。0-2、1-2という圧倒的投手有利なカウントでの打席がわずか9%(平均21%)と非常に優秀。一方で3-2の打席は21%もあることから、2ストライクを奪われたあとにフルカウントまで持っていく技術が相当高いことが推測される。残る課題は初球へのアプローチ。昨シーズンは初球でのホームランが1本止まりだった。初球でもうすこし結果を出すことができれば理想の打者になれる可能性を秘めている。

■栗山(西武) 昨年の成績:打率.288 3本塁打 96四球100三振 出塁率.394

理想的な打席でのアプローチができている打者。初球打ちの割合は14%と高めな上に、3ボールの状況に持ち込むことがうまく、3-0、3-1、2-3の3つのカウントでの打席が全打席の31%を占めている。また、打者有利なカウント(3-0、3-1、2-0、2-1、1-0)での打席が平均より5%多く、投手有利なカウント(0-2、1-2、2-2)は平均より7%少ない。さらにフルカウントの打席も19%と高い割合だ。初球から打っていくが、その狙いが外れた場合でもボール球を見極めて有利なカウントを作ることができる。ストライクを先行されてもフルカウントまでもっていって出塁につなげる。という今回のテーマに最も適合する選手だ。
今シーズンはチーム方針から2番と打つことが予想されている。出塁能力には疑いの余地がなくまさに適任。後ろを打つホームラン王2人(中村、メヒア)や元打点王(浅村)が本来の力を発揮すれば相当強力な上位打線が形成されるだろう。