データで見る 黒田の日本への「アジャスト(適応)」とは

今年の日本プロ野球界において注目度ナンバーワンは何と言っても、黒田博樹投手。メジャーの好条件を蹴ってまでカープ愛を貫き通した男の行動には、日本中が驚かされたのではないでしょうか。現役バリバリメジャーリーガーの日本復帰で、いやが上にも高まる期待とは裏腹に、黒田投手には乗り越えなければならない課題もあるようです。今回のテーマは本人の口からも語られているように、「アジャスト(適応)」です。

■日本とメジャーの違い
日本とメジャーの大きな違いが表1となっております。ご覧いただいてお分かりのように、「移動距離」は大幅に短縮される関係でプラスの作用となるのではないでしょうか。特にこれから「アジャスト」する課題となりそうなのが「日本の公式球」への対応で、これは今季の活躍を左右するカギとなりそうです。

表1

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■課題とは?
「日本の公式球」と「メジャーの公式球」の違いは、メジャーの方が重くて大きい。そして縫い目が荒く滑りやすいと言われています。この違いから生まれるのが、メジャーの方がツーシーム系のボールが変化しやすいという効果です。そして黒田投手の場合は、この違いに対応し「ツーシーム」を武器に多くの打者を打ち取ってきました。その曲がり度合いは魔球と言っても過言ではないほど。しかし今回は再び日本の公式球に戻るわけですから、ツーシームを日本に「アジャスト」させ武器として引き続き使用するのか、それとも見せ球として他の球種で勝負するのか注目です。

■メリットも
黒田投手がメジャーに「アジャスト」した結果もたらす先発投手陣への好影響という点では「登板間隔」が挙げられます。日本では主に中6日が一般的ですが、メジャーは中5日が主流。昨年の広島はというと、前田投手とバリントン投手が中5日でも登板しており、バリントンの抜けたところに中5日でバリバリ活躍していた黒田投手が加入するのだから首脳陣としてもありがたい限りです。

そして、その適応過程で身に付けた投球術が「打たせて取る」というスタイルで、これもすっかり広島投手陣にピッタリはまりそうです。投手分業制の確立されたメジャーにおいて省エネ投法で試合数をこなす「先発」の役割に適応、それまでの「完投型」ではなく「試合を作る」メジャースタイルこそ今の黒田投手の持ち味。広島投手陣でも投手分業制は確立されており、一岡、中田、中崎投手などを筆頭にしたリリーフ陣はリーグ屈指。メジャーから広島投手陣へも最高の形で「アジャスト」できるのではないでしょうか。

■メジャー流を還元
さて、試合を作るという点で先発投手の安定感を示す指標にQS(クオリティ・スタート)というものがあります。表2には昨季の日本人メジャーリーガーのQS。表3ではセ・リーグQS上位10傑、表4には広島先発陣のQSをまとめました。黒田投手のQSには2つの特徴(「標準偏差」と「タフ・ロス」)が存在し、それらが広島打線と黒田投手を結び付けるものとなりそうです。

表2

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表3

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表4

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「標準偏差」というのは、数値のバラツキの幅を表したもので、より低い値の方がバラツキも少ないということになります。その点で黒田投手は標準偏差が一番低く、1試合平均2.56失点が良くも悪くも予想される結果が出ています。昨季のように貧打にあえぐヤンキースでは平均2.56失点すら返すことができず、安定した投球をしているにもかかわらず11勝9敗と投球内容ほどは勝ち越すことができませんでした。そしてその数字を反映したものが「タフ・ロス」というものになります。

■不運を最強打線が援護
「タフ・ロス」とはQSを記録しながらも敗戦投手になることを意味します。不運な敗戦とも言われるこの数値において黒田投手はこちらも最高値となる「47.62」を記録。QSを記録しゲームを作ったものの、その約半分の試合で負け投手となっているのです。

平均2.56失点することがある程度予想され、3点取れば勝利に限りなく近づけるということは、リリーフ陣は準備がしやすく、打線にとっても3点取れば! と勝利へ対する明確な目標が立ちやすい投手だとも言えます。昨シーズンの広島打線は1試合平均4.5点をたたき出す強力打線。そんな攻撃陣が課題となりそうな「日本の公式球」に適応する上でも最高の後押しをしてくれそうです。

日本球界復帰で生じる課題への適応こそ、「戦力」としてチームに貢献することではないでしょうか。個人として、そしてチームとして互いが「アジャスト」できた時に91年以来の優勝が見えてくるかもしれません。