データで見る長打力…柳田のフルスイング効果は?

近代野球には、様々な指標が登場する。その中のひとつ、セイバーメトリクスとは、野球データを分析することで、選手の特徴(長所や短所など)や戦略を客観的に考える方法のこと。今回は打撃の魅力とも言える「長打力」について、日本で主に使われている聞きなれた指標、セイバーメトリクス、オリジナルの指標と3視点から見た今シーズンの打撃結果から「長打力」にについて思いを巡らせてみたいと思う。

■3つの指標から得られる結果とは

まずは、それぞれの指標について説明していく上で、計算式や特徴をまとめたものが表1となっているのでご覧いただきたい。表にもある通り、それぞれに得られる「長打力」に対する意味合いが異なっている。

表1

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「長打率」には単打が含まれるため、打率が上がれば自ずと長打率も上がる。従って、純粋な長打について言及した値ではない。一方の「IsoP」では、単打がゼロでも長打を打つ特性を持っていれば数値が上昇する仕組みになっているので、打率が低くても「長打力」という特長を持った選手を探す意味での指標と言える。そして「長打の割合」は、読んで字のごとく安打に占める長打の割合なので、「安打を打った上での長打がどれくらいか」を測る指標となっている。それでは3つの指標からどのような特長を持った選手なのかを分析していきたい。

■やっぱりバレンティン!

表2と表3では、セ・パ両リーグの「長打率」「IsoP」「長打の割合」の指標について、それぞれ規定打席に到達した選手の上位20傑をまとめた。

表2

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表3

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ではセ・リーグから見てきたい。バレンティンの「長打三冠王」をエルドレッドが阻止した形となっている。112試合の出場にとどまったがリーグ1位の長打率を誇り、IsoPでも「球界を代表するクラス」に当たる.286を記録。惜しくも安打に占める長打の割合ではエルドレッド、バルディリスの両者に敗れたものの、約4本に1本は長打を放つ好結果を記録した。本塁打を軸に見たセ・リーグ ナンバー1の長打力を誇るのはバレンティンと言える。

一方、バレンティンとしのぎを削ったエルドレッドは、118安打に対して55本と約半数が長打(割合:.466)。同じくバルディリスも47本(全115安打)と長打数は多いものの、安打数が伸びず低い打率となっており、安打になれば長打になる可能性が高いものの、チームのチャンスで定期的に結果を出し切れていないのが数字として表れている。

また、最多安打を競った山田や菊池、マートンでは、違った安打の積み上げ方が確認できる。意外なことに単打の数では山田が一番少なく、二塁打、三塁打でも3人に大差はない。しかし山田は持ち前の長打力を生かして本塁打を量産。その結果、安打数も増加し打率、長打率、IsoP、長打の割合、全ての面でバランスが取れた成績につながっている。単打から本塁打まで打てる「バランス」という意味合いでの長打力を誇るバッターは山田となる。

■中村が両リーグ1位

次はパ・リーグに目を移す。表3から分かるように、本塁打を基準に見た長打王は中村で決まり。メヒアとともに本塁打王に輝いた中村は、その長打率もさることながら長打を打つことに関しては球界随一。IsoP(.322)、長打の割合(.551)ともに両リーグ合わせても頭一つ抜けており、特に「長打の割合」に関しては驚異の5割超え。安打の半分以上が長打というのだから、ミスター長打力である。

■柳田の意外!?な結果

そんな長打力を導き出す要素として「フルスイング」が見た目的にもインパクトがあり必要そうだが…果たしてどうか。そんな中、球界を代表する「フルスイング」と言えば柳田が連想されるが、その結果は実に意外なものとなった。長打率では4割を超えており、やはり見た目通り! かと思いきや、IsoPや長打の割合では、ともに下位に沈んでいる。特に長打の割合では下から2番目という結果が示す通り、実際には全166安打に対して37本しか長打を打っていない。単打数はパ・リーグ1位なものの、そのイメージとの差には、柳田を長打ギャップ王と認定したくなってしまう。