【野球21Uワールドカップ】侍は無念の2位、大会を振り返る

野球の21歳以下のワールドカップが16日まで台湾で行われた。プロ・社会人・大学生の混合チームで参加した日本は決勝で台湾に大敗し、2位に終わった。またしてもあと一歩のところで侍ジャパンとしての国際大会初優勝を逃した日本、無念の大会を振り返ってみたい。

■「侍ジャパン」いまだ優勝できず

2013年5月に「野球日本代表マーケティング委員会」が設立され、各年代、性別の日本代表が「侍ジャパン」として統一されることになった。しかし、これ以降「侍ジャパン」として様々な大会に臨んだ男子チームは苦戦が続き、7つの大会で優勝を逃し続けた(表1)。そんな中で迎えたのが今回の第1回21Uワールドカップだ。プロ16人、アマ8人の混成チームで出場した日本は、1次リーグ初戦のオーストラリア戦こそ苦戦を強いられたものの、ベネズエラ、オランダ、ニカラグアには危なげなく勝利し2次リーグに進出、ここでもチェコ、韓国、台湾に3連勝して決勝へ進んだ。しかし台湾との再戦となった決勝では先発の森雄大が四球を連発、2回途中でKOされると、ここまで無失策だった守備にもほころびが生じ序盤から失点を重ねてしまった。打線も西武への入団が決まっている郭俊麟に手も足も出ずにわずか4安打で無得点。最後の最後にワーストゲームを披露してしまった。2位に終わった今大会だが、出場選手の中には来シーズンプロ野球での活躍が期待できそうな選手が何人かいた。そんな選手たちを紹介していきたい。

表1

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■打者では鈴木、北條が活躍

まずは今大会の打者成績をご覧いただきたい(表2)。一番の活躍をみせたのは鈴木誠也(広島)だ。主に3番と5番で出場し、打率は驚異の5割超、本塁打こそなかったが右方向へ大きな打球を放つ場面が目立ち、二塁打3本、三塁打4本と長打を連発、盗塁も3つ決めるなど持ち前のスピードとパワーを遺憾なく発揮し、長打率の.846、OPSの1.377は全選手中トップの数字だった。今シーズンは広島でも出場36試合で打率.344と飛躍を感じさせる内容だっただけに、来シーズンの大ブレークに期待が持てそうだ。
鈴木に劣らない活躍だったのがチームトップの8打点を挙げた北條史也(阪神)。初戦のオーストラリア戦では9回に同点につながるヒット、ベネズエラ戦では先制の3ランを放つなど大会前半の活躍はチームに勢いをもたらした。2次リーグ以降は1安打と課題も残したがポテンシャルの高さを示す大会となった。鳥谷が不在となる来シーズンは1軍定着への最大のチャンス、この大会の経験を生かし大きく育ってもらいたい。

表2

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そのほかの選手では牧原大成(ソフトバンク)と辻東倫(巨人)のプレーが目を引いた。牧原はウエスタンリーグ首位打者の実力を存分に発揮し、今大会の打率も.455。4盗塁のスピードに加え、難しいグラウンド状態をものともしないショートの守備の安定感も光っていた。選手層の厚いソフトバンクではなかなかチャンスをつかむことが難しいだろうが、2軍レベルの選手ではないこと疑う余地がない。辻は代打での出場がメインだったが代打での2安打を含む13打数4安打。打撃でも結果を残したが、最も評価したいのは守備だ。スタメンで出場した15日の台湾戦では本職のショートではなくサードで出場し、好守を連発した。グラブさばきの巧みさは卓越したものがあり、この守備力があれば来シーズン1軍でプレーする機会も得られるのではないだろうか。

■阪神指名の横山、西武入りした台湾のエースが好投

投手の成績をまとめたものが表3だ。10月のドラフトで指名された横山雄哉(新日鉄住金鹿島→阪神1位)が評価に違わぬ活躍をみせた。横山は球威あるストレートで対戦打者を圧倒、初戦のオーストラリア戦では9人から8つの三振を奪う快投で勝利を呼び込んだ。決勝では乱調の森の後を受けて2番手で登板し、自身のエラーもあり2失点。ランナーを置いての投球には課題を残したが、少なくともストレートの威力はプロでも十分通用するものだった。中継ぎであれば1年目から活躍が見込めそうだ。西武入団が決まっている郭俊麟は9日の韓国戦、決勝の日本戦と重要な試合に先発、韓国戦でも1失点と好投したが、決勝ではそれを上回る快投をみせた。とくに切れのあるチェンジアップの威力は十分で1年目から貴重な戦力となりそうだ。すでに1軍実績も十分の上沢直之は格の違いを見せつけた。ベネズエラ、韓国の2戦に登板し1失点、12回で21奪三振を奪って2勝を挙げた。とくに韓国戦では味方の援護が1点にとどまる中での好投、決勝進出に大きく貢献し、このチームのエースであることを証明する内容だった。

表3

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■大会全体としては課題も

地元台湾の優勝で幕を閉じた今大会だが、「ワールドカップ」という冠を背負った大会としては多くの課題が感じられるものだった。最も大きな問題は試合のクオリティーだろう。アメリカ、キューバといった強豪国が不参加だったこともあって参加チームのレベルは低調といわざるを得ないものだった。とくに1次リーグでは大味な試合が続き、25試合中10点差以上が8試合、両チームが4点以下に終わる投手戦はわずか3試合だった。大会を通じても押し出しや、タイムリーエラー、ワイルドピッチなどのミスが多くみられ、1試合平均の四球数は11.4、暴投数は2.0、エラーは2.7(表4)。これらのミスによる得点は全得点の18.9%にも及び(表5)、決勝で日本が許した決勝点も押し出しによるものだった。大会全体の数字を日本のプロ野球と比較すると、ミスの数は1試合につき2倍以上の数字である。ワールドカップと名乗る以上、参加国のレベルアップと試合内容の充実は急務ではないだろうか。また興行面でもさびしい数字が並んだ。(表6)地元の台湾の試合ではある程度の観客を動員したものの、そのほかの試合ではスタジアムは閑散としていた。比較的野球熱の高い台湾でこの状態とあっては今後の開催地選びにも影響がありそうだ。次回の開催予定は2016年のメキシコ。参加国のレベルアップと、興行面でのテコ入れは必須といえそうだ。

表4

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表5

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表6

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