Caféラテ

クロスネット局 ~Caféラテ8杯目~

カランコロン♪

「明けましておめでとうございまーす」

大きな袋を抱えたテレ美ちゃんが、元気よくやって来ました。

今日で松の内も終わりですが、ここ『Caféラテ』は本日が仕事始め。今年最初のカフェラテを注文しながら、いつものようにカウンターに陣取ったテレ美ちゃんです。

「テレ美ちゃん、おめでとう」

「今年もよろしくね、ラジ男くん」

「はい、お土産。マスターとラジ男くんで分けてね」

抱えてきた袋の中には、日向夏やマンゴー、地頭鶏といった宮崎の県産品で作られた土産物がいっぱい入っています。

「マスターにはこれもどうぞ」

お酒が好きなマスターの前に差し出されたのは『百年の孤独』。コロンビアの作家で、ノーベル文学賞を受賞しているG・ガルシア=マルケスが書いた小説の名が付けられた高級麦焼酎でした。

「これはこれは、ありがとう、テレ美ちゃん。お正月は宮崎に行ってたんだね」

世界で唯一、イースター島の長老会に許可されたモアイ像の完全復刻版が建つサンメッセ日南や、神秘的な美しさで知られる高千穂峡ほか、旅先での土産話が止まらないテレ美ちゃんでしたが…。

「ねぇ、マスター。宮崎県のテレビって、ちょっと変わってる気がするんだけど…」

「変わってる? 形が丸いとか三角とか?」

ラジ男くんの混ぜっ返しは無視して、テレ美ちゃんはこう続けました。

「ホテルの部屋でテレビをつけたんだけど、民放が2局しかないの。でね、ラテ欄見たら、テレビ宮崎ではいろんな局の番組が交ざってたんだ…。マスター、何でなの?」

「それはね、テレ美ちゃん…」

マスターお得意の雑学講座が始まるようです。今日のお題は何でしょうか?

「宮崎県には、宮崎放送とテレビ宮崎、2つの地元民放局があるんだけど、前者がTBS系で、後者はフジ系を中心に、日テレとテレ朝系をネットする局として誕生した経緯があるんだ」

1954年7月に、宮崎県初の民放局である宮崎放送が開局しました。遅れること16年、テレビ宮崎は1970年の4月、フジテレビを6割、日本テレビとテレビ朝日を2割ずつネットするテレビ局として開局しました。

「だから、テレビ宮崎では、3つのキー局の番組が混在して放送されるんだよ。テレ美ちゃんがテレビに釘付けになっているプライムタイムを見ると、水・木・土がフジ、日曜が日テレ系、月火にテレ朝が放送されることが多いようだね。民放3局で混成されるクロスネット局はここだけなんだよ」

「クロスネット局?」

「クロスネット局っていうのは、複数のネット局を持つ放送局のことをいうんだよ。地方での新規開局や民放を各県で4局以上にしようという政策が打ち出されたこともあって、徐々に減ってはきたんだ。だけど、いろんな事情から4局以上にはならず、クロスネットが残るところがあるんだ。それに、ネットチェンジといって系列局を切り替えたりして、元の系列とは違う局もあるんだよ」

1986年1月17日、当時の郵政省(現・総務省)は、情報格差是正のため、民放テレビ局を47都道府県すべて4局以上にするという施策を打ち出しました。

これは、1982年の基本方針である受信機会の平等を更に推進する目的でしたが、山形県のさくらんぼTV開局(1997年)による4局化を最後に、事実上終息を迎えました。

そのせいか、3局以下であったり、隣県視聴ができない地域では、クロスネットや番販と呼ばれる番組販売で疑似的に4局視聴を可能にしているようです。

「ふーん、そうなんだぁ。サザエさんの後、鉄腕ダッシュが始まったんでビックリしちゃったんだもん」

そう言うテレ美ちゃんでしたが、実はさっきから、カウンターに置かれたままの完熟マンゴーに目が釘付けになっています。どうやら関心は、クロスではなく、ポリエチレンのネットで大事そうにくるまれた完熟マンゴーのようです。

カランコロン♪

caferate

ラテと広告 ~Caféラテ7杯目~

カランコロン♪

年の瀬も押し詰まった築地村は、いつにも増して賑わっています。

ここ『Caféラテ』も、新年を迎える前に朝から大掃除でてんてこ舞い。

ラジ男くんは雑巾を手に窓ガラスを、手伝いに来てくれたテレ美ちゃんはテーブルを磨いています。

マスターはというと、既に厨房を片付け終え、自慢のカフェラテを淹れ始めました。

「2人とも、お疲れさま。もう十分きれいになったから、おしまいにしよう」

マスターに促されて掃除を終えた2人でしたが、この言葉を待ちかねていたように、テレ美ちゃんはラテ欄を読み出しました。

「年末特番が目白押しで、まだ、ちゃんとチェックかけてないんだもん。えーと、この3時間スペシャルは…」

横から覗き込んだラジ男くんの目に飛び込んできたのは、鮮やかな色合いで作られたバラエティー特番の広告でした。

「すごいね、その特番。右肩に大きな広告載ってるし、下の方にも四角い広告がある。それに、ラテ欄も同じ色の網が掛けられてる!!」

新聞ラテ欄の広告は小枠広告と呼ばれ、表札・突き出し・記事中・記事挟み・記事下に大別されています。

一般的に、表札広告とは右上または左下に表札のように縦長で掲載される広告です。幅が番組表2局分ほどあり、2段重ねすると1局分の長さに匹敵します。突き出しとは、表札を正方形に近い形で載せる広告で、記事右下や左下など隅に突き出されます。記事中と記事挟みは記事と記事の間に置かれ、前者は十数行、後者は数行の幅となっています。記事下はその名の通り、記事の下のスペースに掲載される広告です。

「ラジ男くん、ここ見て。昼間の番組でも特番の宣伝してるわ」

テレ美ちゃんが指さしたのは、この秋に放送したバラエティー特番の再放送でした。

ラテ欄には、再放送番組の内容は一言もなく、プライムタイムに放送される3時間スペシャルのことが書かれています。

「そうだね。最近は、そういう手法が目立つね」

マスターは新聞やテレビのことに詳しく、特にラテ欄にまつわるエピソードには事欠きません。今日は何を話してくれるのでしょう?

「何時にどんな番組が放送され、誰が出るのか、ラテ欄の基本情報は3つだよね。時間の横にタイトル、その下には簡単な内容、残りのスペースは出演者。テレビが娯楽の代表格だった時代は、それだけで十分だったんだ。だけど、今みたいに多様な楽しみ方ができるようになると、テレビ全体の視聴率も昔のようにはいかない。放送局は、あの手この手で読者の目を引き付けようと躍起になっているんだよ」

「1つ1つの番組枠が大事な広告宣伝ツールってわけね、マスター」

「その通りだね、テレ美ちゃん。放送局にとって数十文字のマス目は、とても有効な広告スペースでもあるんだ。だから、縦読みみたいな工夫が生まれたりするんだよ」

放送局では、番組ごとにプロデューサーがいます。

そのプロデューサーの下、様々な番組が作られるのですが、それをラテ欄という10文字1行の枠の中で、たくさんの視聴者に見てもらおうと腐心しているのが、番宣に携わる人達です。

その人達を含め、業界内では、ラテ欄に載せる文を『ラテ』と呼んでいます。

「ねぇマスター、ちょっと思いついたんだけど、俳句や川柳のように、五七五でラテ作ったら面白いかも!?」

「30文字使えるところを、わざわざ17文字にかい?」

「うん。文字がいっぱいあって見づらいなぁって思う時があるし」

「テレ美ちゃんらしい、ユニークな発想だね」

「そうだ、ツイートしてみよっと」

スマホを取り出すテレ美ちゃんの横から、何やらブツブツとつぶやきが聞こえてきます。

「Caféラテで 寒さ飲み干す テレ美ちゃん」

さっきまで思案投げ首で押し黙っていたラジ男くんが突然、詠み始めたのです。

「ん!? ずっと黙ってると思ったら、ラジ男くん…」

これには、テレ美ちゃんはもちろん、マスターも苦笑いするほかありません┐(´-`)┌

 

さて、今年もあとわずかとなりました。

皆さま、風邪など召さぬよう、ご自愛ください。

それでは、良いお年を。

カランコロン♪

caferate

10文字詰めの理由 ~Caféラテ6杯目~

Hey!Say!JUMPは、なぜ平成JUMPと表記されるのか?

ラジ男くんの疑問に、マスターが口を開きました。

「2人とも、ラテ欄をよく見てごらん。1行は10文字で折り返されているよね」

「1、2、3…ホントだ。数えたことなかったけど、10文字なんだね」

「Hey!Say!JUMPは何文字あるかというと、12文字ある。ということは、11文字目からは下の行に落ちることになっちゃう。だから、平成JUMPと表記してるんだよ」

「なるほどね。でも、平成って漢字にしてるのは何でなんだろ?」

ラジ男くんのつぶやきには、テレ美ちゃんが答えてくれました。

彼らの名前には、平成の時代を高くジャンプしていくという意味が込められているからだそうです。

「じゃあ、何で2行にまたがるのを避けているか、分かるかい? テレ美ちゃん」

「えーと…。読みづらいからかな?」

「一言でいえばその通り。さっきも言ったけど、新聞はいろんな人達が読むものだからね。読みやすく、分かりやすくが基本なんだ。だから、紛らわしかったり、読みづらかったりしないよう、気をつけて編集している。これもその1つで、泣き別れといって禁則扱いされているんだよ」

泣き別れとは、英単語や洋数字など、単体で意味を持つ言葉が次の行にまたがってしまうことです。

新聞に限らず、刊行物を編集する場合、句読点が行頭に来てしまったり、括弧類の始まりが行末、終わりが行頭に来るのを禁則といって、放っておいてはいけない決まりになっています。

「ところで、マスター。1行が10文字詰めなのはどうしてなの?」

「そうだな、答える前に2人で新聞の行数を数えてごらん」

「1、2、3、4、5…私のは、縦書きで73行みたい」

「こっちの新聞も同じ! 僕の方も73行だ!!」

読みやすくという基本方針の下、新聞は文字サイズを大きくしてきました。

現在は1ページ73行、12段がスタンダードになっているようです。

「73行を横書きに換算すると、大体112文字くらいになるんだよ。この新聞のラテ欄には、9局が同じ幅でレイアウトされている。そうすると1局何文字になるかな、ラジ男くん」

「えーと、112÷9=12.444…だから、12文字ちょい!」

「そうだね。時間の帯が2つ入って、局と局の間には罫線が引いてある。そして、放送時間とマークで2文字分必要。つまり、番組内容の入るスペースは10文字ってことになる」

「おぉ!!!」

テレ美ちゃんも、ラジ男くんも、目と口を真ん丸に開いたまま固まってしまいました。

カランコロン♪

caferate

出演者の表記 ~Caféラテ5杯目~

カランコロン♪

珍しく、開店と同時にテレ美ちゃんがやって来ました。

「やあ、テレ美ちゃん、いらっしゃい」

「マスター、聞いて。昨日の縦読みが気になってラテ欄見てたら、おかしなこと発見しちゃったの」

「どうしたの? テレ美ちゃん」

ラジ男くんの問い掛けにカフェラテを頼みながら、テレ美ちゃんが話し出しました。

「あのね、歌番組にL’Arc〜en〜Cielが出てるんだけど、ラテ欄にはラルクアンシエルって書いてあるの。それにHey!Say!JUMPは平成JUMP。AKBとかV6はそのままなのに…何でかな?」

「それはね…」

マスターがおもむろに口を開きました。

テレビが大好きなテレ美ちゃんにとって、マスターは、ラテ欄雑学講座の先生なのです。

今日の疑問は、ラテ欄の出演者表記のようです。

「新聞は、いろんな年代の人が読むよね。特にラテ欄は、小さな子供からお年寄りまで、みんなが読むところだよね」

「うん。私の家では、ラテ欄はみんな読んでる。ラジ男くんトコもそうでしょ?」

「そうだね、僕の家でも家族全員が読んでるなぁ」

英語やフランス語などアルファベットの固有名詞は、カタカナ表記にするのが新聞編集の基本的ルールです。

「例えば、この前、スコットランドがイギリスから独立するか否かの住民投票があったよね。その時、発言が大きな話題になったエリザベス女王を『 Elizabeth』とは表記しないよね」

「確かに。アメリカ大統領のオバマさんもカタカナ表記だし、考えてみればみんなそうだね」

ラジ男くんは納得がいった様子でしたが、テレ美ちゃんはまだ首をかしげています。

「だけどマスター、AKBやV6、それにTOKIOもアルファベットなのはどうしてなの?」

「芸名に限っては、アルファベットの読み方そのままの場合と、ローマ字読みするケースはアルファベットでの表記を認めることにしているんだよ。老若問わず、新聞を読む人は、ABCは読めるからね」

「ふーん、そうなんだぁ」

「でもね、テレ美ちゃん、もちろん例外はあるんだよ。ラテ欄の内容は、専門の配信会社が新聞社から委託されて作成しているのは知ってるかな?」

「うん。気になってたから調べたことがある」

「元になる情報を出す放送局と編集権がある新聞社の間では、しばしば表記の仕方に食い違いが出るそうなんだ。そこで、間に立つ配信会社が両者の言い分を聞いて、時代の流れに沿った形で表記を統一していくんだよ。だから、昔はNGだったけど、今ではOKになったものが増えてきたんだ。ほら、見てごらん」

マスターが指さすラテ欄にはSMAPの文字がありました。

実はデビュー当初、SMAPはスマップとカタカナ表記されていましたが、世間の認知度が上がるにつれ、新聞社ではアルファベットのまま表記することを解禁したのです。

「でも、Hey!Say!JUMPは、どうして平成JUMPなんだろう?」

おやおや、今度は、納得していたはずのラジ男くんが首をかしげています。

どうやら、新たな疑問の種がまかれたようですが…。

さて、マスターはどう答えてくれるのでしょうか?

カランコロン♪

caferate

ラテ欄の縦読み ~Caféラテ4杯目~

カランコロン♪

学校帰りのテレ美ちゃんが今日もやって来ました。

「テレ美ちゃん、いらっしゃい」

いつもならマスターに挨拶し、即座にカフェラテをオーダーするテレ美ちゃんなのですが…。

「テレ美ちゃん、いつものでいいんだよね?」

「えっ? うん」

ラジ男くんの問い掛けにも生返事のテレ美ちゃん。スマホに目を落としたまま、何やらブツブツ独り言を言っています。

「へぇ~」「すごーい!」「なるほど!!」

「テレ美ちゃん、何ブツブツ言ってるの?」

「ごめんごめん。ラジ男くん、ちょっとこれ見て」

カウンター越しにラジ男くんが覗き込んだ先には、ラテ欄の画像が次々と出てきます。

スマホの画面に釘付けになって感嘆の声を漏らす2人に、さすがのマスターも気になったのか、夕刊を読む手を止めて声を掛けました。

「テレ美ちゃん、何をそんなに夢中になっているんだい?」

「マスターも見てみて。面白いんだから!」

スマホの画面にはプロ野球中継のラテ欄が映し出されています。

「どれどれ。ん? 最近話題の縦読みだね」

「さすがマスター。知ってたのね」

ここ『Caféラテ』は、その名の通りカフェラテが評判ですが、もう1つの売りはマスターの雑学講座なのです。

どうやら今日は、ラテ欄の縦読みがお題になるようですよ。

「マスター、縦読みって誰が考えたの?」

「ネット上では2ちゃんねるとかで流行っていたけど、ラテ欄で最初にやったのは、北海道放送だそうだよ」

「北海道放送って、地元のプロ野球チーム、日ハム戦を中継しているテレビ局でしょ?」

「そうだよ、ラジ男くん。ラテ欄には、番組内容や出演者が載っているだろう。視聴率獲得に大きな役割を果たすラテ欄は、重要な広報宣伝媒体になっているんだ」

北海道放送では、2010年のシーズンから日本ハム戦を中継するラテ欄に縦読みを取り入れ始めたそうです。

野球中継の見どころをラテ欄で伝えるのは難しいため、エンターテインメントな要素を入れていけたらと思いついたのが、ラテ欄の縦読みでした。

ラテ4の1

左の画像は2013年6月21日付『北の大地で虎退治』。これは同局でも会心の出来といわれている1つだそうです。

右下の画像は今年4月23日付『おそらく試合終了までお届けできるはず』。過去最長18文字の縦読みです。

ラテ4の2

実はこの試合は9回2死でタイムオーバーになり、最後まで中継できなかったそうです。同局報道制作センター・スポーツ部の熊谷貴史プロデューサーは、インタビューの中で、そうエピソードを語っています。

「北海道放送だけじゃなく、NHKでも、こんなのが載ったんだよ」

マスターが検索した画像は、6月2日放送のプロフェッショナル。サッカーW杯ブラジル大会を直前に控え、本田圭佑選手を取り上げた番組でのものでした。

ラテ4の3

「ラテ欄って、よく見ると面白いのね、マスター」

「テレ美ちゃんやラジ男くんがまだ小さかった頃は、行頭を全部▽で始まるようにしたり、行末を感嘆符で揃えたりして目を引こうとしていたこともあったんだよ」

「へぇ~。これからラテ欄も注意深く読まなくっちゃ」

早速、マスターから新聞を借りてラテ欄に目を凝らすテレ美ちゃんに、ラジ男くんがポツリ。

「ラテ欄も? 『も』って、普段新聞読んでないくせに…」

一言多いラジ男くん。

この日も余計な揚げ足取りで、テレ美ちゃんは縦読みならぬ、ご機嫌ナナメ>_<;

カランコロン♪

caferate