ストライク率から見た制球力とは

今回のテーマは「制球力」。意図した場所に投げられることは誰にでもできる業ではないですが、投手において意図的にストライクを取れることほど自身を助ける武器はないのではないでしょうか。全投球数のうちストライクが何球あったかを示す「ストライク率」や「ボール球」が締める割合などをもとに投手の制球力についてみていきたいと思います。
※各表では、2014年に先発した投手の中から20試合以上登板の選手を基準にベスト5を選定しました。

まずは、表1「ストライク率」。こちらは先述しました通り、全投球数におけるストライクの割合で、ファウルや見逃し、空振りなどのストライクとなったものすべてを含んだ数値です。昨年の各リーグ平均ストライク率はセ・リーグ(64.1%)、パ・リーグ(63.5%)となっております。

表1 ストライク率

表1 ストライク率

ストライクの数では、当然のように両リーグ奪三振王がランクイン。セのメッセンジャー、パの則本がそれぞれリーグ唯一の2000ストライク超えでトップとなっています。ストライクを稼ぐ点では、この2人が制球力に優れているというデータが出ております。そのストライクの内訳を各表とともに見てみたいと思います。

各表の内容は以下の通りです。
表2:空振りで獲得したストライク
表3:見逃しで獲得したストライク
表4:ファウルで獲得したストライク
表5:ボールとなった数

表2 空振りS獲得数

表2 空振りS獲得数

表3 見逃しストライク数

表3 見逃しストライク数

表4 ファウル数

表4 ファウル数

表5 ボール供給数

表5 ボール供給数

表6 最短

表6 最短

則本は、空振り、ファウルでともに首位、見逃しストライクにおいても2位となるなど、球威、制球力の両面でストライクが取れていることが推測されます。それを証明するように、空振りで獲得したストライクの数で他を圧倒。倍近くの空振りストライク率を誇っており、少々コースが甘くなっても力で空振りを取れるピッチャーであることが示された形となっております。ちなみにパの平均は9.5%なので、その数値がいかに優れたモノかがうかがえ知れます。四死球数も少なく、空振りでも見逃しでもストライクを取れるこの奪三振王は、パを代表する制球力と球威を併せ持った投手と言えるのではないでしょうか。

次にメッセンジャーですが、空振り、見逃し、ファウルのすべてで1位を獲得している半面、ボール供給数でもトップとなっています。全投球数に占めるボール率こそセ平均値(35.9%)を下回っていますが、1試合平均ボール数では同僚の藤浪に続くセ2位となるなど、ストライクも多いがボール球も多い投手と言えそうです。実際77四死球という数字が示すように、決して制球力が優れた投手とは言えないものの、その持ち味であるバラツキの産物が多くの奪三振となっているようです。それは、奪った226三振に占める見逃し三振の割合が約24%で、120奪三振以上の投手の平均が20%ということを考慮すると、良くも悪くも制球力のバラツキが生んだ奪三振数とも言えそうです。

意外なところでは、メッセンジャーと並んでセ最多勝に輝いた山井はストライク率セ最下位という結果に終わっています。そんな山井ですが、実はメッセンジャーと似たタイプの投手であることがデータから予想できます。それは「ボール率の高い投手」と「見逃しストライク数の多い投手」の間には共通する投手が多く登場します。その関係性から予測されるのは、メッセンジャー、山井、久保らがボール球の多さから見逃しストライク数を稼げているということ。そんなメッセンジャーと山井の違いはストライクゾーンで勝負するか否かの違いではないでしょうか。ストライクも取れる制球力を持つメッセンジャーとその周辺で勝負する山井。微妙な制球力の差が2人の勝負所に違いを生んでいるようです。まさに制球力と投球術、2タイプの最多勝投手が生まれた昨シーズンだったのではないでしょうか。

金子、メッセンジャー、則本らのストライク率の高さを見てみても、制球力に関する数値が高いほどゲームが作れ、勝利に近づく確率が高まることは間違いないことが証明されているわけですが、それだけが勝利の要因ではないこともわかりました。山井のようにいかに相手を打ち取るか、そのためには制球力があることや、ボール球をどう利用するかも大事だということです。

最後に、良くも悪くも制球力が影響した例として、昨年度先発したセ・パ両リーグの投手において最短投球数で降板した投手のワースト10傑を表6にまとめました。最短は一瞬の制球力に欠いた「危険球」での降板となった山口の5球。そして、危険球や負傷を除いたノックアウトでの最短降板は、井川の19球が最短となっているようです。