思い込みも「コイのうち」なんてね ~あまりに思いが強いと真実も見えなくなる~

校閲は、原稿の間違いを正すのが商売。赤字の見落としは恥とばかり、間違い探しに躍起となります。ただし「見つけなきゃ」「直さなきゃ」の思いが強すぎると、時に失敗をやらかしてしまうもの。「これは絶対間違いのはずだ」と、思い込んでしまったがためのミスがそれ。

日常生活でもよくある失敗経験「思い込み」。これが今回のテーマです。

プロ野球ドラフト会議。甲子園を沸かせた金の卵に大学野球のスター選手、社会人の実力派まで、今年も多くのタレントが球界入りを決めました。筆者のひいき球団も、なかなかの収穫だったようで…。ルーキーの活躍が今から楽しみです。

指名権を獲得し、当たりくじを掲げる球団代表。最後の最後に意中球団から指名され、感極まる少年の表情。恩師や母親、友人の祝福と激励。悲喜こもごもの中、祭りは終わります。

大願成就。夢をかなえた選手には、学校関係者や後援会などからお祝いの差し入れが届きます。ある年のドラフト記事から。「〇〇や届いたばかりの鯛の洗いが並んだテーブルに着くと、コーラを手に乾杯を…」。お祝い会場の風景ですね。どうでもいいといえばそこまでながら、「鯛」は「タイ」とするのが表記のルール。校閲者は訂正作業に入ります。

ところが、既に「思い込みのワナ」にはまっていました。彼がしたのは「鯛」を「コイ」に改悪する訂正ミス。確かに鯛の旬は春というけれど…。もしかして、指名球団の広島(カープ=鯉)に引っ張られた? 皮肉にも、スポーツ紙などでは、広島を指す場合に「鯉」を使えるケースもあるんですが。「コイの洗い」であるはずだの「思い込み」。痛恨の敗着!

おまけのエピソードは「白魚の踊り食い」を「シラウオの踊り食い」と訂正してしまった事例。酒好きで、この一品に目のない担当者は迷わず直したそうですが、結論は「シロウオ」が正解。ただし「シロウオ」なら、せめて漢字は「素魚」と書くべきでした。記者も悪い。

「思い込みも恋のうち」とかいいます。「最近あの子と目が合うんだ」「昨日も何か言いたそうだった」「あっ、今目を伏せた」「これって絶対…」。大概、その恋は成就しません。

よくある赤字エピソード