え、ホント?「校閲は原稿を読むな!」~霜降りの高原肉にはサシが入っているか~

校閲とは、編集される原稿を点検~校正し、内容の正誤を調べ訂正する作業。事実誤認や勘違い、言葉の誤用から不適切な表現まで、校閲者は記事に潜む間違い(=赤字)探しを生業とします。そんな校閲現場ならではの「よくある赤字」エピソードを紹介。

第1回は「校閲は原稿を読むな!」です。

冒頭で「原稿を点検」とか書いておいて、なんじゃそりゃ。ですよねえ。まあまあ、そこはコラムの先を読んでみてください。

「霜降りの高原牛肉」。う~む、うまそう。自然豊かな草原で育った牛さんのアレ、すっすっと脂身のサシが入ったアレですね。なんて思った人は、校閲現場では、はい、アウト~!

これ、よくある赤字事例です。たったこれだけのセンテンスに3箇所も赤字が。文字入力の際に、担当者が地名に由来する固有名詞を思い込みで間違えたことから、いかにもありそうな牛肉が生み出されたというわけ。

まず、この牛肉は霜降りではありませんでした。うん? いや、本当は霜降りなのかな? 赤身か? それはともかく、元の原稿では「霧降り高原」の「牛肉」。「霜降り」の「高原牛肉」ではなかった。

じゃあ「霜」を「霧」に訂正し、「の」の位置を変えればOK? いえ、もう1つ。元原稿にも間違いがあったんです。「霧降り高原」がそれで、正しくは「霧降高原(きりふりこうげん)」でした。日光市の北方、女峰山東山麓に広がる有名な高原です。

「原稿を読むな」とは、原稿の文章からイメージを抱き眼前の誤字を見落とす危険性を戒めたもの。ここでは「あー霜降りかあ」と脳裏においしそうな肉を思い浮かべた瞬間、「霧」の字が見えなくなってしまいがち。だから、くれぐれも原稿は「読むな」と。

かくして印刷工程に渡る最終原稿は「霧降高原の牛肉」と直し事なきを得ました。途中の訂正までは校正の仕事。そして最後の「り」を削除する訂正こそが校閲業務の本分というわけ。

よくある赤字エピソード