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頼れる選手は誰?「勝負強さ」で選ぶベストナイン

毎年シーズンオフに記者投票でそれぞれのポジションの最高の選手を選ぶベストナイン表彰、記者投票という性質上客観的な評価となるので、すべてのファンが納得できる結果となることは難しい。多くの試合を見たファンの実感を伴うベストナインの選出はできないのか?その試みとして、「勝負強さ」を物差しとしたベストナインを選んでみた。
 実際に試合を見る際、一番力が入る場面はどこかといえばそれは「僅差のイニング」だろう。「ここで打てば勝ち越せる」「ここでつなげば一気に逆転だ」「このイニングだけは抑えてくれ」などなど、同点や1点差の場面では見る方の力の入り方もそのほかの場面とは大きく異なるものだ。そんな緊迫した場面で活躍した選手をベストナインとして選ぶことができればどうなるのか?その結果を今回は紹介していきたい。

選手を選出するにあたって今回は独自の数字を用意した。野手は1プレーが勝敗に直結する、1点差の場面でのプレーを収集し、それを6つのポイントに分けて集計した。そしてそれらを合計したものを各選手の「プレー価値」として、選手の比較を行い、最も数字の高い選手をベストナインとした。6つのポイントの詳細は以下の通り。
「打撃ポイント」 殊勲打(同点、勝ち越し、逆転の適時打)の本数
「出塁ポイント」 同点または1点差の場面で、得点圏である二塁に走者を進めた、または自身が進んだ回数
「盗塁ポイント」 同点または1点負けている状況で盗塁した回数
「盗塁阻止ポイント」 同点または1点勝っている状況で盗塁を阻止した回数(捕手のみ)
「走塁マイナスポイント」 同点または1点負けている状況で盗塁に失敗、またはけん制でアウトになった回数
「守備マイナスポイント」 同点または1点勝っている状況で犯したエラーの回数(指名打者は除く)
チームの勝敗に直結する場面で記録されたプレーを総合すれば、緊迫した場面で結果を出した野手が浮かび上がってくるのではないかという試みである。

また投手はこの方法では選出できないので、「僅差イニングでの無失点率」を選出の基準とした。
「僅差イニングでの無失点率」とは、同点もしくは1点勝っているイニング状況でのイニングを「僅差イニング」とし、そのうち無失点で投げ終えたイニング(交代での降板を含む)の割合のことである。例えば先発して5イニングを0-0の状況で終え、6回に失点して降板した場合の無失点率は83.3%(5イニング÷6イニング)となる。

この方法で選んだベストナインが表1と表2だ。ここからは各ポジションの集計結果を紹介していく。
表1-2
表3

■捕手(表4、5)

セ・リーグはリーグ制覇したヤクルトの正捕手・中村が1位。リーグで唯一規定打席に到達した捕手であり妥当なところだろう。打撃、盗塁、盗塁阻止でリーグ2位以内を記録、攻守でリーグトップの捕手といえる結果となった。大健闘だったのは巨人の小林。出場試合数は中村の約半分にとどまったが、ポイントではわずか1点差に迫っている。とくに盗塁阻止12回は中村と同数、失策でのマイナスポイントも3にとどめていて守備面では上位の数字を残した。
パ・リーグは攻撃面の3つのポイントの合計では1位だった嶋(楽天)を抑えて、炭谷(西武)が1位となった。僅差での盗塁阻止19回は両リーグトップの数字だ。弱点とされる打撃でも勝負どころの9月の3度の殊勲打で数字を伸ばし、他の捕手とそん色のないポイントを稼いだ。ほかで目立ったのはソフトバンクの高谷だ。正捕手候補の細川、鶴岡が離脱するなかで3位タイのポイントを稼ぎ見事に穴を埋めている。
表4-5

■一塁手(表6、7)

畠山が両リーグ最多の打撃ポイントを稼ぎ総合でも1位となった。勝負を決める打者であることが求められる4番打者として、これ以上ない結果を残したといえるだろう。前を打つ川端、山田で作ったチャンスを確実に点につなげた畠山の働きがあってこそのリーグ優勝だったことは間違いないところだ。
パの1位は中田。ほかの一塁手の成績が伸び悩む中で順当に1位となった。ただ合計33ポイントはリーグ内の全打者中では9位に止まる。侍ジャパンの4番最有力候補としては「勝負強さ」を印象付けるとまではいかないシーズンだったかもしれない。

■二塁手(表8、9)

トリプルスリーを達成したヤクルトの山田が2位以下に圧倒的な差をつけた。チャンスメイクの回数である出塁ポイントは両リーグ2位の好成績、さらに盗塁ポイント13に対して、走塁マイナスポイントはわずかに2。ただやみくもに走っていたのではなく、質の高い内容が伴っていたことが数字でも表れている。侍ジャパンの正二塁手として山田のライバルだった菊池(広島)は大きく水をあけられた2位に止まった。強みであったはずの走塁、守備面でマイナスポイントが目立った点は残念だ。
パの1位は安定した成績を残した日本ハムの田中。2位のクルーズと攻撃面では互角だったが、僅差での失策ポイントの少なさが決め手となった。
表6-9

■三塁手(表10、11)

首位打者、最多安打を獲得した川端が3位に止まる中、ルナ(中日)が高ポイントを獲得して1位となった。合計43ポイントはセ・リーグの内野手ではトップの数字だ。打撃ポイントも27と中軸として十分な活躍だったが、特筆すべきは盗塁ポイントの8という数字。僅差での盗塁を8回成功させたのに対して、失敗は0。あまり俊足のイメージはないが、実は来日3シーズンでの盗塁成功率は92%(成功23、失敗2)と素晴らしい成績でもある。中日との再契約は微妙となっているが、印象以上にクオリティの高い選手であることは間違いなく獲得をお勧めしたい選手だ。
上位3人が30ポイントを超えるハイレベルな争いとなったパ・リーグは中村が1位。打点、本塁打の2冠を獲得したが、打撃ポイントでもリーグ2位。重要な場面でもきっちり結果を出していた。1ポイント差で2位だったレアードも打撃ポイントでは中村と同数を記録、同僚の中田を上回る好成績だった。

■遊撃手(表12、13)

両リーグで30ポイントを超えたのは坂本(巨人)だけ。現在もっとも層の薄いポジションといえるかもしれない。坂本は貧打に苦しむチームの中で自身も苦しんだが、それでも打撃ポイントは29を記録。これはリーグ4位の成績で勝負強さは健在だった。悪い面で目立ったのは田中(広島)。守備マイナスポイントの10は両リーグでワースト。今シーズンの22失策のうち18個が1点差以内の場面と手痛い場面でのミスが目立ってしまった。
大接戦のパ・リーグは日本ハムの中島が1位。打撃、出塁ではポイントが伸びなかったが、盗塁の11ポイントが効いた。ただ上位の選手にほとんど差はなく、リーグ内で飛び抜けた選手はいない1年だったといえるだろう。
表10-13

■外野手(表14、15)

全選手中1位のポイントを挙げたのはDeNAの梶谷。最も大きかったのは盗塁での17ポイント。盗塁王のタイトルこそ山田に譲ったものの、28盗塁中17盗塁と半分以上が僅差の場面でのもので、走塁で多くの好機を作っていた。さらに出塁ポイントの19もリーグ3位。僅差でのチャンスメイク力ではリーグトップクラスの成績を残した。2位の福留は打撃ポイント37のうち14ポイントを本塁打で稼いだ。これはリーグトップの数字である。ゴメス、マートンの成績が低迷する中、貴重な一発を放つ勝負強さが光っていた。3位の筒香も51ポイントと好成績。DeNAは前述の梶谷が出塁、盗塁で好成績、後を打つ筒香は打撃、出塁がリーグ上位の数字、さらにロペス、バルディリスは打撃ポイントが20を超えていて中軸の攻撃力は間違いなくリーグトップのものだった。

パ・リーグはトリプルスリーの柳田がリーグでは断トツの50ポイントを挙げて1位。打撃と盗塁のポイントもリーグで1位だった。さらに殊勲本塁打の14本も福留と並んでトップとまさに完ぺきなシーズンを送った。2位タイには通算成績では目立たなかった松井稼(楽天)と角中(ロッテ)が入った。松井稼は打順が定まらない中で、打撃ポイント20と各チームの中軸クラスを記録、さらに盗塁でも10ポイントを挙げていてどの打順であっても適応していたことが伺える成績。角中は出塁でリーグトップタイを記録、打撃でも21ポイントと、上位打線を打つ打者として十分な成績を残している。シーズン最多安打の秋山(西武)は数字が伸びなかった。これにはチーム事情の影響もある。西武は1点差試合が両リーグ最小の35試合しかなく、僅差の場面が絶対的に少なかったこと。さらに8、9番打者の出塁率がそれぞれ.214と.205と非常に低く走者を置いての打席が少なくなりがちだったことも響いた。ただ、リーグワーストタイとなる走塁のマイナス9ポイントも数字が伸びなかった原因の1つ。これは来季への課題だろう。
表14-15

■指名打者(表16)

李大浩が強力打線の主軸として高い数字を記録したが、西武の森も同ポイントを挙げ大健闘した。李大浩が大半を打撃ポイントで稼いだのに対して森は出塁でも多くのポイントを挙げた。ただ森の本職は捕手。攻撃であげた33ポイントは捕手としては圧倒的な数字なので、捕手として出場することができるようになればチーム力が底上げされることは間違いない。3位の近藤(日本ハム)もそれは同様。両選手ともに今後は守備面でのレベルアップが待ち望まれるところだ。
表16

■投手(表17~22)

投手は先発、救援の2人を紹介する。セ・リーグの先発1位は巨人のマイコラス。今シーズンは11連勝でシーズンを終えたが、それは幸運に恵まれたものではなく実質が伴っていた。今シーズンの145イニングのうち同点または1点リードだったイニングは107イニング、そのうち96イニングを無失点で投げ終えている。無失点率はほぼ9割となる.897と素晴らしい数字だ。また失点したイニングでも最多の失点は2にとどめていて失点率(僅差イニングでの平均失点)はわずか0.14とまさに「頼れる」投手だった。
パの先発は順当に大谷が1位。以下各チームの主力投手が並んだがその中で大嶺祐が無失点率.819と大健闘している。セ・リーグで3位に健闘した若松(中日)と合わせて今季大きく成績を伸ばした投手だといえるだろう。

表17-18

表19-22

救援投手はベストに加えてワーストも紹介する。あえて僅差で登板する救援投手にとって、無失点率は一般的な評価にも直結するからだ。両リーグの上位は納得の選手が占めたがとくに素晴らしい数字だったのがセーブ王のサファテを抑えてリーグ1位だった五十嵐(ソフトバンク)だ。なんと僅差イニングでの失点はわずかに1回、1点差で出す投手として五十嵐以上の投手は今シーズンいなかったといえる成績だ。セ・リーグ1位のバーネットも僅差での失点は2度だけ。今シーズンリードを守れなかったのは引き継いだ同点の走者の生還を許した、10月2日の優勝決定試合だけだった。
ワーストには今季中継ぎで苦しんだチームの選手が目立つ。阪神のベテラン2人はそれぞれ7度ずつ救援に失敗、ここ数年巨人のブルペンを支えたマシソン、山口も今シーズンは振るわなかった。両チームともブルペンの新戦力発掘は大きな課題になってきた。またパ・リーグワーストの武藤は今シーズン1度でも僅差イニングに登板した157投手中でも154位の無失点率だった。これだけ失敗しながらも20回以上僅差イニングで投入されたのは期待の証でもあるのだろう。

以上が「勝負強さ」で選んだベストナインである。意外な結果となったポジションもあり興味深い結果になったのではないだろうか。実際に発表されたベストナインと比較してお楽しみいただければ幸いである。

浦和と広島の勝利スタイルの違いとは

野球に比べて得点が入ることの少ない競技であるサッカー。そんなサッカーにおいては1点で試合が決することも多々あるが、果たして先取点を取ることで試合を有利に運べているのか。今回は先制点の優位性を検証してみたい。

■先取点取ると勝つ確率上昇

表1には2015年にJ1に在籍するクラブの先取点を取った場合の試合展開と同2014年分をまとめた。
表1 先取点(1)
先取点を挙げたチームで勝率50%以上は
13/18チーム(15年)
17/18チーム(14年、降格した3チームも50%超)

また勝率70%以上でも
7/18チーム(15年)
10/18チーム(14年)

先取点を取ることで自分たちのリズムで試合を運べ、それに伴い勝率も上がっているのが分かる。14年に降格した3チームも50%超で勝利していることを考えると、降格を避ける上でも先取点を取った試合は最低限制したい。

表2には先取点を取って勝利した試合数が、全勝利数に占める割合をまとめた。やはり全チーム50%を超えており、先制点が全勝利の多くを占めていることから、勝点を稼ぐ上でも重要なファクターであることが分かる。また、先制点の持つチームごとの意味合いもうかがい知れる。
表2 先取点(1)
甲府や山形のように1点を奪い引いて守って勝利するチームには先取点勝利が勝利の必需品
全勝利に占める割合が高い甲府、G大阪、F東京、名古屋、鹿島、川崎Fは先取点獲得で勝率アップ

先制点を挙げることで勝利に一歩近づくことが分かったわけだが、今季優勝争いをする2チームは少し事情が違うようだ。

■浦和と広島が持つ他チームとの違いは?

今シーズン首位争いを繰り広げる浦和と広島には他の上位争いをするチームと比べてある違いが見られた。それは両チームとも全勝利に占める先取点勝利の割合は決して高くないという点。つまり、優勝争いをするだけあって「全勝利数が多い」にもかかわらず、他チームに比べて「先取点勝利の数がそこまで多くない」のである。

その差は何かー。「先制点を許したにもかかわらず勝利している試合数」が決定的な違いで、通算勝利数を伸ばしている要因でもある。それをまとめものが表3となっている。
表3 先取点(1)

■先制されても勝負強い浦和

浦和は無敗で制した1stステージにおいて先制された試合でも負け知らず。2stステージで1敗したものの66.7%の高勝率で逆転勝利を収めている。一方の広島も浦和ほどではないが40%超の勝率で追随しており、この逆転勝利の数こそが上位争いで一歩抜け出している理由でもある。

■無敗を支える武藤の同点弾

表4では同点となる得点を挙げた回数を、表5にはその個人同点弾ランキングを一覧にした。同点回数では浦和が鳥栖と並んでトップ。個人同点弾ランキングでも武藤が4点で3位に位置している。武藤は1stステージで8得点を挙げているが、そのうち4点が同点弾。つまり浦和の無敗を支えた男こそ、武藤なのである。
表4 先取点(1)
そして注目していただきたいのが、浦和の同点回数がリーグで唯一、被先制回数を上回っているということ。「被先制回数=最低限引き分けに持ち込むためには同点としなければならない回数」であり、浦和のみその回数を超えている。同点とした後に勝ち越されてもなお、追いつき逆転する執念、勝負強さこそが無敗優勝を成し遂げた今年の浦和の強さの秘訣で言える。

では広島の強さは何か。先取点を取った時の勝率の高さと前半をリードして折り返した時の勝率が挙げられる。前者は14勝1分無敗で93.3%、後者は100%、つまり「先取点」こそが広島が勝利する上での生命線といえる。

先取点を奪うことで試合を優位に進める広島と、奪われても取り返し、そして勝ちきる浦和。同じフォーメーションで同じサッカースタイルの2チームだが、その勝利の方程式は全く異なるものであるようだ。
表5 先取点(1)

出場停止が影響?Jリーグ優勝・降格争い

今季のJリーグ選手登録期限が9月18日をもって締め切られた。これにより、リーグ戦は現在登録されているメンバーで戦うこととなる。終盤に突入した今、あらためてその補強内容やケガ人、累積警告者数など今後の試合に影響を及ぼしかねない要素を振り返ってみたい。

■失速避けたい浦和が層の厚さを見せるか

表1-1には、J1リーグで優勝&残留争いを繰り広げるチームのケガ人・累積リーチ者数を、表1-2には各チームの今後の展望をまとめた。まずは優勝争いから見てみたい。それぞれ優勝を争うライバルとの戦いを2戦ずつ残しているが、3位F東京、4位G大阪は浦和、広島戦で敗れると後がない状態となるだけに落とせる試合は一つもない。

J 表1-1(1)
J 表1-2(1)
首位を走る浦和は、森脇・ズラタンが累積リーチ。次節鹿島戦では那須が出場停止と前節槙野に続いて2戦連続で守備の一角を欠く厳しい戦いとなりそう。とはいえ、阿部・永田らベテラン守備陣がカバー出来得る層の厚さは他にない武器。このまま充実した戦力でラストスパートも有り得る。

2位の広島はドウグラスが出場停止になった時の戦いが今後のカギとなりそう。野津田や浅野ら若手が控えるものの、得点ランク3位の実力者の存在を全員でカバーできるか。そのためにもここ3年間、好相性の清水・川崎F・湘南戦は勝利が必須となりそう。

■ケガ人多数のF東京に過密日程G大阪

3位F東京はケガ人の多さが気になる。太田も脇腹痛で練習を回避するなどこれ以上の戦力ダウンは避けたいところ。残り試合数は少ないものの、森重、中島(2試合)、高橋(3試合)は各選手あと3枚もらうと複数試合出場停止となるだけに不必要なファウルには気を付けたい。

首位と勝点10差の4位G大阪はこれ以上負けられない。岩下・倉田・パトリックらチームのセンターラインに累積リーチが揃っているだけに、急な戦力ダウンも否めない。さらにACL準決勝もあり日程的な肉体面も他チームに比べて負荷となりそう。

■J1残留争いの行方は?

続いて残留争いを見てみたい。現在1試合少ない松本、清水、同山形の順で降格対象となっている。

勝点31の12位仙台は、ケガ人も出場停止となりそうな選手がいないだけに、降格争いのライバルとの試合に勝てばほぼ残留か。また同勝点の13位鳥栖は浦和・広島との戦いが残っているものの、他は下位との試合なだけに、ここをいかに勝ちきるかで残留が見えてきそう。ただし、ここまでチームをけん引してきた鎌田の負傷状態がどうなのか。その点が今後を左右しそう。

■ライバル蹴落とし松本の一気浮上も?

そして上位対決のない14位新潟、1試合のみの15位甲府は取りこぼしだけに注意したい。ともにチームの格となる選手(舞行龍、山崎、コルテース/阿部拓、松橋)が警告枚数でリーチ状態なので、そこを計算した戦い方も監督の手腕の見せどころか。

降格圏に位置するチームで可能性が一番ありそうなのは松本か。唯一オビナが累積警告リーチ状態ではあるが、降格争いのライバルとの試合が続くここで勝利を挙げられれば一気の浮上もありそう。

■ケガ、累積…問題山積の清水は果たして

残留圏まで勝点8差の17位清水の現状はデータ的に非常に厳しいと言える。ヤコヴィッチ、ヨンアピンの両外国人をケガで欠く上に、本田、鄭、ウタカ、デュークも出場停止にリーチ。一戦も落とせないなかでの戦力ダウンが必至なだけに、一戦必勝で目の前の試合を無駄なファウル無しで勝ち抜く以外に方法はないだろう。

最後に最下位山形。伊東や松岡をケガで欠き決して戦力の厚くない今のチーム状況下で、主力に累積リーチ選手を多く抱える点は今後の戦いに影響を及ぼしそう。最終戦にG大阪戦(ACLのため日程不確定)を控えるだけに、そこまでの6戦で白星を積み重ねたい。

■3連戦の結果次第で大宮陥落も?

次はJ2のケガ人・累積状況を振り返る。表2-1にはJ1同様、昇格&残留争いを繰り広げるチームのケガ人・累積リーチ者数を、表2-2には各チームの今後の展望をまとめた。

J 表2-1(1)
J 表2-2(1)
現在1位の大宮は2位磐田と勝点10差、このまま行けばJ1復帰がほぼ当確だろう。しかし家長を欠いたここ数試合は、不調気味なだけに東京V、千葉、磐田との3連戦の結果如何では、自動昇格枠争いは分からなくなりそう。家長・カルリーニョスを欠く東京V戦が今後のJ2を大きく左右しそうだ。

同じく自動昇格圏の磐田の懸念材料は、チームの得点源であるジェイの負傷の状態。名波監督が長期離脱を否定しているもののアダイウトン以外にコンスタントに得点している選手がいないもの事実。負傷の具合によっては昇格プレーオフ圏内キープが目標にもなりそう。

好調維持する3位C大阪の課題はケガ人の多さ。直近では玉田、田代、楠神らがケガを抱えている。そして扇原が警告1枚で2試合出場停止になるなど、ファウルにも細心の注意が必要か。一方、エジミウソンが調子を上げており、怖い存在となりそう。

4位福岡も札幌相手に劇的勝利を収め、調子は上向き。腰痛で離脱している濱田が戻れば、ほぼベストメンバーが揃う。東京V、C大阪、千葉との3連戦が昇格への最大の試練か。

5位東京Vは10試合中6試合が昇格プレーオフを争う10位以内のチームとの対戦。戦い方次第では大きく順位を落とすことも予想されるだけに、一戦必勝といきたい。ダークホースは、ここ8試合負けなしで4失点と安定した守備を誇り、補強選手も機能している6位愛媛。既に大宮、磐田、C大阪との戦いを終えており、残りは福岡を除くと現在自分たちより下位にいるチームばかり。慢心せず戦えばプレーオフ進出も可能だ。

■プレーオフ圏内争い

6位までのプレーオフ圏内に食い込むためにも負けられないのが7位長崎以下のチーム。長崎は累積リーチの選手が多く存在し、戦力維持が課題。さらに深刻なのは得点力不足で、上位進出する上でも克服しなければならない最大の難点だ。千葉も同様に累積リーチ多数、そして谷澤、ペチュニク、パウリーニョらは次の出場停止試合数が複数なだけに、失速につながりかねない。ケガ人を多数抱え得点増が必須の金沢に対し、累積・ケガ人がいない北九州は今後の戦績次第ではプレーオフ圏も見えてきそう。

■降格争い

上位との試合数を多く残す21位栃木(6試合)、22位大分(5試合)の勝点上積みは非常に厳しく見える。さらに大分は累積警告でリーチ選手を主力に多く抱え、降格を争うチームとの試合も少ない。

一方の降格圏を免れているチームでは、京都が6戦負けなしで復調気味。下位対決も3戦あり降格回避の可能性十分。水戸は勝点差4の余裕があるものの上位との対戦も多く、岐阜・京都との直接対決を制することができるか。

そこで降格圏争いに巻き込まれそうなのが勝点差1の20位岐阜。DF陣を支える阿部が2試合出場停止、ヘニキ、岡根もそれぞれあと2枚の警告で2試合出出場停止となってしまう。正念場を迎える残り10試合、不必要なファウルがチームの今後を左右することは十分あり得る。

歌舞伎の殿堂 <<築地さんぽ10月号>>

歌舞伎の殿堂といえば、東銀座の歌舞伎座ですが、関東大震災前までは新富町にも歌舞伎の中心的な劇場がありました。それが新富座です。

江戸時代、庶民の娯楽だった歌舞伎は、江戸四座といわれる芝居小屋でのみ興行が許されていました。中村座・市村座・森田(守田)座・山村座の四座で、後に山村座が取り潰されたため、最終的に江戸三座となりました。

1881年(明治14年)に3代目歌川広重が描いた「東京名所之内・第一の劇場新富座」

1881年(明治14年)に3代目歌川広重が描いた「東京名所之内・第一の劇場新富座」

このうち森田座は、維新後の1872年(明治5年)に新富町の地に移り、3年後には新富座と改称しました。その後すぐに火災で焼失したのを機に、1878年(明治11年)、新富座は西洋式の大劇場に生まれ変わります。

ガス灯による照明で夜間上演が可能という画期的な近代劇場は日本初の試み、そして日本最大規模でした。新富座専属の役者には、9代目団十郎・5代目菊五郎・初代左団次の3名優がおり「団菊左時代」といわれる歌舞伎の黄金時代を現出しました。

かつて新富座のあった場所には、今は京橋税務署が建つ

かつて新富座のあった場所には、今は京橋税務署が建つ

その後、近代日本にふさわしい歌舞伎をつくろうという運動の一環として、1889年(明治22年)に歌舞伎座が開業します。新富座は、これに対抗するため市村座や中村座などと謀って、歌舞伎座排除に動きます。「団菊左」をはじめ人気役者の出演予定を5年先まで埋め、歌舞伎座には出られないようにしたのです。背に腹は代えられぬ歌舞伎座は仕方なしに莫大な見舞金を新富座などに支払って、やっと歌舞伎を上演できるようになりました。しかし、「団菊左」の引退とともに新富座は衰えていき、明治の末年ごろには歌舞伎座、市村座とともに関西の松竹に買収されました。さらに、関東大震災により劇場が焼失、二度と再建されることはなく、そのまま廃座となりました。

 


築地さんぽ(本文用)

【プロ野球】大物が続々引退、消えゆく80-90年代野球

 球界で例年になく大物の引退が相次いでいる。現役選手の安打数で上位3人を占めていた、中日の小笠原と和田、そして谷繁が選手として引退、さらに同6位の谷(オリックス)も今季でユニフォームを脱ぐことを決めた。投手でも現役で唯一200勝を達成している山本昌(中日)、そして勝利数2位の西口(西武)が引退を発表している。ほかにも日米通算で100勝100セーブを達成している楽天の斎藤、通算480試合登板の小山(楽天)、2006年の日本ハム日本一に貢献した森本(西武)、最優秀防御率のタイトルも獲得した高橋(DeNA)、プロ通算65勝の朝倉(中日)がこれまでに引退を決めている。

 ここまでで紹介した11人の選手はすべて1980~90年代のドラフトで指名され入団した選手たちだ。80年代、90年代にプロ入りした選手は今シーズン開幕前の時点で50人いた(表1)。それがここまでの段階で11人の引退が決定し、オフの間にはさらに引退する選手や、戦力外となりNPBから去る選手も現れるだろう。1999年以前に入団した選手が姿を消す日はそう遠くない未来に訪れることになりそうだ。そこでここからは過去のものとなりつつある1980~90年代の野球を経験している選手たちを紹介していきたいと思う。
表1
 今シーズン引退する選手たちの中で最も過去の野球を知る選手はなんといっても山本昌だ。山本昌は1983年のドラフトで中日に5位指名され入団した。同じドラフトで1位指名を受けた選手には西武黄金時代の主力である渡辺久信、辻発彦をはじめ、星野伸之(阪急)吉井理人(近鉄)佐々木誠(南海)水野雄仁、香田勲男(巨人)小早川毅彦(広島)中西清起、仲田幸司(阪神)藤王康晴、仁村徹(中日)と80~90年代を代表する選手がずらりと並んでいる。

 山本昌は後楽園球場での公式戦を経験した最後の現役投手でもある。1987年4月10日の巨人戦ではリリーフで登板し駒田徳広に四球、山倉和博にタイムリーを許し、西本聖から三振を奪ったところで降板。続く11日の試合では打者3人(吉村禎章、中畑清、駒田)と対戦して無失点で降板している。この翌年には東京ドームが完成し後楽園球場は閉鎖されたので、この年以降にプロ入りした選手は昭和のプロ野球を代表する球場でプレーすることはなかった。

 後楽園のようにかつて本拠地として使われていた球場でのプレー経験を持つ選手も残り少なくなってきた(表2)。中日がかつて本拠地としていたナゴヤ球場でのプレー経験(一軍公式戦)がある現役選手はあと6人、中日の選手だった山本昌のほかには、谷繁、三浦と岡島(DeNA)松井稼(楽天)に加え当時は阪急に所属していた中嶋(日本ハム)もプレー経験がある。1986年のドラフトで阪急に入団した中嶋は、阪急の本拠地であった西宮球場だけでなく、ロッテの川崎球場、近鉄の藤井寺球場、南海の大阪球場、ダイエーの平和台球場での試合にも出場経験がある。川崎、西宮、大阪、平和台の各球場はほかに現役で経験のある選手はおらず、この4球場でのプレー経験がある選手は中嶋で最後の選手となる。近鉄が大阪ドームに移ったあとも数年間使用されていた藤井寺球場は、中嶋のほかに西口、松井稼、サブロー(ロッテ)もプレーした経験を持っている。
表2

 山本昌、谷繁が引退したため中嶋は来季も現役を続行すれば1980年代、そして「昭和」に入団した最後の選手となる。そして90年代を代表する投手である、野茂秀雄(当時近鉄)と日本の公式戦で対戦した経験を持つ最後の選手ともなる。中嶋は野茂と1994年5月3日の試合で2度対戦し、2度とも四球を選んでいる。

 米国へ渡った選手との対戦経験といえば、オリックス時代のイチローとの対戦を経験した投手も数少なくなってきた。現役でもっとも多くの対戦経験(54打数12安打)を持つ西口が引退し、残るは松坂(ソフトバンク)と川井(楽天)だけ。意外な名前にも思える川井はロッテ時代の2000年に2度対戦していて、対戦結果は二ゴロと死球だった。イチローが日本にいたころにパ・リーグのチームに所属した投手はNPBにはもうほとんど残っていない。今季全休した松坂が今後も復帰がかなわなかった場合は川井が90年代のパ・リーグ最後の投手となる。

 最後に「昭和最後の選手」となった中嶋と対戦経験のある現役投手を紹介しておきたい(表3)。中嶋は2007年以降バッテリーコーチを兼任しており、とくに近年は試合に出場する機会がきわめて少ない。そのため対戦体験のある投手が徐々に少なくなりつつあるのだ。現在対戦の経験がある投手は全部で29人、しかしそのうち4人はすでに引退が決定、来季の去就が不透明な投手も少なくないためこの数はまだ減りそうだ。西口の引退する西武には対戦経験のある投手がいない状態になり、ロッテも涌井だけだ。中嶋が来季も現役を続行し、試合に出場すればプロ野球新記録となる実働30年を達成する。打席に立つシーンに巡り合った際にはその対戦投手にも注目をしてみていただきたい。
表3